『暗闇』は1996年にPC98用として、Melodyから発売されました。
舞台となるのは、あるクリスマスの夜。
主人公の乗った都会のビルのエレベーターが、突然停止してしまいます。
<感想>
エレベーターの中に取り残されたのは、主人公と「まり」という名の女の子の2人だけ。
密閉された空間に男女が1人ずつ。
そんなシチュエーションの中で、あなたは一体何を想像するでしょうか?
究極の閉鎖空間から様々な可能性を表現してみせた本作は、まさにifを楽しむゲームでした。
さて、本作はゲームジャンルはノベル系ADVになります。
もっとも、近年の共通ルートから個別ルートに~ってタイプではありません。
98ゲームで一時期流行ったり、或いはSFCのかまいたちが近いのですが、選択肢により物語が何通りにも分岐していくタイプのゲームになります。
ヒロインの名前は「まり」なのですが、実は展開によって3人の異なる「まり」がいて、それぞれに大きく分けて3つのシナリオがあります。
そのため、大きなシナリオが9つあるわけですが、各シナリオ内でも細かく分かれていきますし、EDも複数用意されていますので、ED自体は数十個に及ぶかと思います。
このED数はアダルトゲームの中でも、おそらく多い部類になるかと思いますね。
まぁ、EDの数が多いと言っても、中にはちょこちょこっと最後だけ変えたものもあり、そういうゲームは全部のEDを見る気にもなれません。
しかし、本作はそうではなかったんですね。
ホラーやミステリーや感動系やコメディタッチのものまで、実に多彩に物語が分岐していきました。
出発点が閉ざされたエレベーターの中ですからね。
最小の舞台と最小の人材で良くここまで発想を広げられたなと、ライターの引き出しの広さに素直に感心してしまいます。
その多彩さがあるからこそ、ついついプレイを続けたくなるわけです。
ストーリーも面白かったですし、ノベルゲームのゲーム性にしても秀逸な方でしょう。
こういう自分の選択次第で展開が変わっていくものだと、ADVでもゲームをやっているんだなって気になれますし、それは小説では味わえない感覚で好きなんですよね。
そういうわけで、ストーリー及びゲーム性の完成度という面では、かなり高い部類の作品でしょう。
完成度を重視する人であれば、本作を名作扱いする人がいても不思議ではないと思います。
ただ、路線的にはかまいたち系になるわけで、新鮮さは若干足らなかったのかなと。
もちろん、エレベーターの1室という狭い空間を舞台にした点は、珍しかったし新鮮ではありました。
これにアダルトゲームのエロさが加われば、更に個性を感じられていたのでしょう。
しかしながら、あんまりエロくないというか、絵がちょっと変だったんですよね。
いや、お尻のラインとかフェチな部分では非常に良かったのですが、どうにも顔のデッサンがおかしくって。
ヒロインは3人いて原画も皆異なっているのですが、及第点はメガネっ子くらいなものでした。
まぁ、当時はそんな風に思ったものですが、この辺は好みもあるでしょうね。
今みると、これはこれで個性があって良いじゃんって思えてきますし。
ただ、キャラデザが当時の主流路線の絵柄とは異なり、萌え重視のユーザーにはうけにくかっただろうなということですね。
名作というのは、類似作品がある場合には、既存の作品を超えてこそ名作足りうると思うわけでして。
私は本作をかまいたちと同等に楽しめたのですが、本作の方が後発なわけですから、名作足りうるにはもう1つ何かが欲しかったわけです。
それは可愛い萌えキャラでも良かったわけで、そんなキャラでエロさがあれば文句なしに名作扱いしていたでしょう。
時代に逆行するかのような絵柄にもう少し何とかならんかったかと思うと、ちょっと勿体無かったですね。
<評価>
そういうわけで個人的には良作止まりかなって感じですし、地味な舞台に地味な絵でマイナーな作品ではあったのですが、プレイした人には好評でしたし、上記のように完成度重視の人であればより楽しめるような良く出来た作品ではありましたね。
ノベルゲームは数多くありますが、この類のゲームは近年はほとんどないように思うわけでして。
たまにはこういうゲームもやりたいものですね。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2024-11-11 by katan
コメント
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ここ、キャッツになったんでしたっけ?
ブランド解散してしまいましたよね。
(エロゲの移転はついてけません)
スカも良作もあり惜しいブランドでした。
スパークが好きだったかな…
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Cat’s Proやメロディがあって、その後にぱんだはうすになったはず。
でも、移り変わりが激しくてついていけないのは同感ですね。
Melodyブランドではコレクターが今でも印象的です。