かえで通り – brandnew days innocent –

2000

『かえで通り – brandnew days innocent -』は、2000年にWIN用として、inspireから発売されました。

1999年に発売された『days innocent』の続編になります。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
具体的には、簡易マップ上から移動場所を選ぶタイプでした。

主人公は、大学の後輩である琴平睦月に、地元での夏のアルバイトに誘われます。
その地元というのが、前作『days innocent』の舞台であり、『days innocent』のキャラたちが大学生へと成長した姿が描かれつつ、前作の世界観の中に本作の主人公という外部の異分子が加わり、その視点から物語を見ることになるのです。
なお、前作の重要人物が本作では既に他界していますので、その点は事前に覚悟しておくべきでしょうね。

それから、inspireは後に同人扱いになるようですが、この頃は商業ブランドでした。

<感想>

本作に対しては、その人のゲームへの姿勢次第で、大きく印象が変わってくるのではないでしょうか。
アダルトゲームの、特にノベルゲームに対しては、シナリオ(≒テキスト)にしか興味のない人も一定数います。
それでも最近は減ったように思うのだけれど、本作が発売された頃なんかは、シナリオ重視ですという、本当にテキストにしか興味を示さない人もいましたからね。
そして、そういう人であればあるほど、本作は楽しめる可能性が高いのでしょう。

とういうのも本作は、田舎を舞台にした作品でありつつ、その閉鎖的な社会で暮らす人々の人間関係や心の機微が、丁寧に描かれており、物語自体に派手さはないものの、およそテキストという観点からは、その年のノベルゲームの中でも上位クラスと言えるからです。
したがって、シナリオ(テキスト)だけという観点からは、非常にオススメのできる作品なのだと思います。

しかしながら、上記のようにシナリオが良いのにもかかわらず、作品全体として素直に褒めることをせず、シナリオ重視ならばと限定しているのには、当然理由がありまして。
つまり本作は、シナリオ以外が駄目な作品だったのです。

私は作品の「内容」に関しては好きなものを作れば良いと考えますが、その内容を楽しませるための最低限の環境作りは大事だと思います。
本作はノベルゲームですが、ノベルゲーとして必要なシステムが、本作には備えられていません。
それでいながら本作は、結構要求スペックが高かったのです。
もちろん今なら全く問題はないのでしょうが、当時としては要求スペックが高くて無駄に重いにもかかわらず、必要なシステムがことごとく欠けているわけですからね。
本作のような雰囲気や余韻を楽しむ作品においては、プレイ中の不便さからくるストレスは、作品への感情移入を阻害しかねません。
何を考えて設計したのか知りませんが、無駄な機能を付けるよりも先に、もっと優先すべきシステムがあったと思うのですけどね。

本作はマップ移動式であるものの、プレイしていてその必要性は感じられませんでしたし、前作にあった時間を飛ばすシステムもなくなりましたしね。
何を考えてゲームをデザインしたのか分からず、前作より退化してストレスが溜まりやすくなったのは、非常に残念でした。

グラフィックは、人を選ぶキャラデザかなと思いますし、エロも薄いです。
また、キャラが多数出る場面などでは、デフォルメされたキャラのフェイスウインドウで進行するのですが、ここも文字だけを読んでいる気にさせられるおそれがあります。

それから、テキストは丁寧に書かれていますが、ストーリー自体に特別なところはなく、ここも普通といった内容でした。

<評価>

本当にシナリオ(テキスト)だけの作品なんですよね。
そのテキストだけに価値を見出せる人ならば、本作は十分に楽しめるのでしょう。

しかしながら、テキストだけならば普通に小説を読んでた方が良いし、小説だと自分の好きなペースで楽しめるのに対し、本作だと良質なテキストをわざわざ、ストレスが溜まるようなシステムで読まされるので、更に分が悪くなります。

独特の雰囲気のある作品ではあるのですが、それ以上に不満も残る作品でした。

ランク:C-(佳作)


かえで通り

Last Updated on 2025-01-28 by katan

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