『INVITATION 影からの招待状』は1989年にTOWNS用として、データウエストから発売されました。
データウエストの看板タイトルであるサイキックディテクティヴシリーズ。
本作はその第1弾にあたります。
<概要>
ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。
大まかなあらすじとしては、主人公・降矢木和哉は、人間の心の中に世界に潜入し、事件の謎を解明する探偵です。
舞台となるのは、古い因習が今尚残る地方の旧家、白鳥家。
そこで女当主である白鳥きくは、半年前から昏睡状態にある孫娘、白鳥麻美の意識回復させるため、主人公にサイコダイブを依頼します。
<感想>
このシリーズには大きな特徴が2つありました。
1つは主人公がサイコダイブすることで、キャラの心象世界が舞台となることです。
単純なストーリーの出来自体は、それ程突出しているわけでもないのですが、心象世界をもゲームの舞台とすることで、他のADVとは一線を画する独特の世界観の構築に成功したのです。
これによって、プレイヤーも新鮮な感覚で楽しむことができたわけですね。
この傾向はINVITATIONも含めシリーズ全般に共通するのですが、まだ処女作ということで、この部分に限ればシリーズ内では目立たないのかなと。
その代わり、処女作ということで設定の齟齬も生じていないですからね。
ストーリーの濃さという点ではシリーズ他作品に軍配が挙がるかもしれませんが、完成度という意味ではシリーズ内でも屈指の出来と言えるかも知れません。
ちなみに、同じ1989年には、2作目の『メモリーズ』も発売されています。
そして、私は個性を重視するので、癖の強い『メモリーズ』の方が好きです。
しかし、まとまりという観点からは、本作に分があるわけでして。
ここら辺はもう、好みの問題と言えるでしょうね。
<演出>
シリーズのもう一つの特徴として、DAPSによる動画と音声が挙げられます。
このシリーズはDAPSというシステムによって、当時最高の演出を実現することができたわけです。
もっとも、動画と音声の同期に成功したのは3作目の『AYA』であり、『INVITATION』には音声がついていません。
本作に関しては、まだまだ発展途上中であり、演出面も続編ほどには、大きな長所とまでは言えなかったといえるでしょう。
<ゲームデザイン>
それと、後のシリーズとは大きく異なる本作だけの特徴として、ゲームシステムがあげられます。
後のシリーズ作品はシンプルなコマンド選択式で、後の作品ほど攻略が簡単になっていきます。
他方、本作には、いわゆる時間の概念があって、キャラは特定の時間・場所にしかいません。
これにより異常なまでに難易度が高くなっており、自力クリアはかなり困難な状況になっていました。
つまりシリーズ全体では演出重視の作品なのですが、本作に限って言えば、DAPSが未成熟ということも相俟って、ゲーム性重視の作品だったのです。
結果的に、シリーズ最高かつ最凶のゲーム性を有していたわけですね。
なお、キャラが特定の時間・場所にしかいないことから、繰り返される光景がループものに通じる印象を与えます。
良し悪しはともかくとして、これもまた本作の特徴ではあるのでしょう。
<評価>
総合では、全ての項目で水準ライン以上を保ちつつ、世界観の特異さ等の長所があることから、名作と呼べるかと思います。
ただ、同じ年に発売された『メモリーズ』の方が個性が強いので、個人的には『メモリーズ』の方に更に高い点をつけた形になります。
もっとも、上述のように、ゲーム性では本作の方が上ですし、何を重視するかでも好きな作品は異なってくるのでしょう。
もちろん、ファンならどれも好きなんでしょうけどね。
だから評価は、あくまでも普段の私の基準ではってことですね。
ゲームとしての歯ごたえも要求するなら『INVITATION』、シリーズの持つ異質さを極めたのが『メモリーズ』、ストーリーの良さなら『オルゴール』、ネタ的なものも含めたグラフィックのインパクトなら『AYA』と、重視する点の違いによって好きな作品が分かれうるのもまた、このシリーズの特徴であり「味」なのでしょう。
Last Updated on 2025-05-09 by katan
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