『グリーングリーン』は2001年にWIN用として、GROOVERから発売されました。
野郎共の存在感が強い作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
具体的には簡易マップが表示され、そこから移動先を選ぶタイプとなります。
あらすじ・・・
山奥にある男子のみが生息している全寮学園「私立鐘ノ音学園」に、主人公・高崎祐介とその仲間達は悶々とやるせない日々を送っていた。
そんなある日、校長から、この学園に来年度から共学制の話が持ち上がり、試験的に女子が編入してくるという話が…。
<感想>
原画に片倉真二、シナリオに桑島由一、ヤマグチノボルということで、発売ブランドこそ変更にはなったものの、2000年に発売された『カナリア』の後継作品になるのでしょう。
個人的な記憶としては、『カナリア』は最初から話題性が高くて、本作はそれと比べると少し話題性が劣る印象でした。
だから2002年頃までであれば、代表作は『カナリア』と答えたでしょう。
しかしグリーングリーンシリーズはその後も発売されていますし、またアニメ化もされていますし、シリーズとしての後押しもあって、知名度が徐々に上がっていきました。
そのため、今となってはグリーングリーンシリーズがこの製作陣の代表作となるのでしょうね。
さて、本作はあらすじにもあるように、ド田舎にある野郎だらけの全寮制の学校に、女子が1か月間だけ編入してくるという内容になります。
したがって、ジャンルとしてはベースは恋愛ものになりつつも、他の恋愛ゲームと異なって男同士の友情であるとか、それら全部をひっくるめた青春ものとしての側面が強い作品になっています。
セカイ系なんて言葉自体は、まだ本作発売時にはなかったかもだけれど、それは単に言葉がないだけであり、その意味する内容に該当する作品は既に流行していたわけでして。
PC98時代であるとかWIN初期の頃の恋愛ゲーだと、攻略対象も一杯いるし、脇役も一杯いる作品も少なからずあったように思います。
しかし次第に、主人公とメインヒロインの関係性だけを強調するようになり、具体的にはヒロインの数を減らし、脇役の数も必要最小限に削っていくような作品が増えていきました。
主人公とヒロインの関係性だけに着目するセカイ系の思想も、それはそれで非常に面白い作品を生み出せるのだけれど、決して最良というわけではありません。
主人公の縦社会の存在や横社会の存在が希薄になるという、問題点やマイナス点も有するジャンルなのです。
縦や横のつながりが希薄になっていった時期だけに、だからこそ逆にその部分を大事にした作品というのは、それだけで貴重であり価値があると言えるのでしょう。
その横のつながりを示す端的な手段としては、主人公と友人の関係をしっかり描くことが挙げられます。
良い作品は、男の友人をしっかり描けているものだと言う人もいますが、必ずしもイコールの関係ではないにしても、確かに一理はあるのでしょう。
本作は主人公と野郎共の描写の熱い作品であり、「この時期の」典型的な恋愛ゲーとは一線を画していましたし、そのような作品を望んでいた人には待望の作品だったでしょうね。
本作は目パチ口パクもありますが、これも昔はよく見かけたにもかかわらず、本作発売時にはほとんど見かけなくなった手法です。
本作の全体の雰囲気としては、ラノベに近いものがあり、エロゲとしては当時は少し異端な新鮮な存在でもあったと言えるでしょう。
しかし個人的には、個別に見ていくと、横関係の扱いや目パチ口パクなど、失われつつあった過去の良いところを上手く復活させたと、そういう懐かしさのような印象の方が強かったですね。
<評価>
総合では佳作とします。
ただ、後はもう、個人の趣味の問題でもありまして。
男同士の絡みが見たい人であれば、本作は良い作品となるでしょう。
他方で百合アニメを好むような、女の子を愛でたいという人だと、恋愛ゲーで可愛い女の子を見たいのに、何で野郎を見なければならないのかと、不満に感じてしまうこともあると思います。
まぁ、これはこれで面白かったのも確かなのですが、よりラノベっぽい作品が登場し漫画やラノベと近接化することで、エロゲとしてのアイデンティティーが失われてきたように思うわけで、これをエロゲとして出すこと自体に疑問を抱いたものでした。
ランク:C(佳作)
Last Updated on 2025-02-24 by katan