『CANDY GIRL』は2005年にWIN用として、Le.Chocolatから発売されました。
業界初の等身大ドールを用いたADVであり、インパクトの強い作品でしたね。
<概要>
Le.Chocolatは、業界にとって異端な作品を作る傾向の強いブランドでしたが、本作は、その中でも特にインパクトのある作品でした。
具体的には、本作は、等身大のリアルラブドールを用いて作られた作品だったのです。
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
概要・・・
プレイヤーは、普通の会社員であり、兄であり、調教師・・・
最初の選択肢で、プレイヤーは自分の運命を選択することになり、その運命を歩むことになります。
しかし、変わり行く運命の中でただひとつ変わらない事があります。
それは、あなたの相手が人形であるということ。
そして、その人形たちは魂を持ち、あなたと接することで様々な運命を歩んでいきます。
果たして彼女たちは、人と同じ生き方を選べるのでしょうか。
<グラフィック>
2Dの絵でもなければ、ポリゴンの3Dキャラでもない。
一応実写ゲームの範囲に含まれるのでしょうが、生身の女性を使った作品でもありません。
本作は、リアルラブドール専門メーカーであるオリエント工業製の人気ドール、「CANDY GIRL」をヒロインにした、業界初の作品なのです。
フィギュア・人形を使用したソフトウェアという広い範囲で考えるならば、WIN95登場時辺りに、どこかがやっていそうな気もしますけどね。
基本的に当時あまり興味がない分野だっただけに、個人的にも記憶に残っていないし、あの時期のソフトを網羅して把握している人もいないでしょうから、探しても咄嗟には出てこないかなぁ。
ただ、あの時期に仮に何かしら発売されていたとしても、等身大ドールを用いた作品は、本作が初めてになるのでしょうね。
等身大ドールと言っても、個人的には安いのしか知らなかったこともあり、本作の映像を見た時には非常に驚いたものでした。
今はこんなに可愛いドールがあるんだ~って。
その後、オリエントのHPを調べにいったら、凄い!、リアルっ!、なんて綺麗なんだろう!って、ちょっと感動してしまいました。
やばいな~これなら一つ欲しいな~とか思ったりもしたけれど、調べたら桁が全然違うんですね。
額にも驚いたけれど、確かにこの最高のクオリティを生み出すためには、必要な金額なのかもしれません。
お金があることは当然のこととして、管理する場所等、他にもいろいろ犠牲にした上で成り立つ、そして何より本当に好きな人向けの、完全な大人の趣味なのでしょう。
ある意味、変態紳士たちの行く着く先、到達点なのかもしれません。
何体か購入して、様々なシチュエーションを楽しむのも非常に面白そうだけれども、いろいろな意味で、現実には自分には無理なように思います。
現実には無理なことを、疑似的にでも体験させてくれるのがゲームの利点だとすれば、本作はまさしく夢を疑似的に体験させてくれた素晴らしいゲームなのだと思います。
また、一般的なエロゲの場合、フルプライスの作品であっても、CGは100枚もいきません。
平均的な枚数でいえば、80枚程度ではないでしょうか。
それに対し本作は、ミドルプライスであるにもかかわらず、約300枚ものCGがあります。
客観的なCGの量という点では、文句なしの作品といえるでしょう。
<感想>
本作はオムニバスのノベル系ADVです。
具体的には、主人公は「会社員」「兄」「調教師」の何れかを選び、それに応じた3人の女性との疑似生活を堪能することになります。
あらすじは下記のとおりになります。
愛・・・主人公が『レディ・メイカー』(調教師)の運命を選択した時のヒロイン。
彼女『愛』は依頼主の娘を模倣して作られた、高性能のアンドロイドである。
ただ、しょせんはアンドロイドであり、人とは何かが違う…。
主人公は、彼女に”人間らしさ“を教える事となる…
アリス・・・主人公が『ごくごく普通のお兄さん』の運命を選択した時のヒロイン。
最愛の妹として登場する。だが、最愛の妹は既に不治の病で他界していた。
最愛の妹を失った中、主人公はとある骨董屋で、妹に似た人形を見かける。
その人形との出会いから、主人公の新たな運命の歯車が回り始める…。
理恵・・・主人公が『ごくごく普通の会社員』の運命を選択した時のヒロイン。
ある休みの昼下がりに、突然押しかけてきた。
どうも、自分の会社の開発部の先輩が作ったテスト用アンドロイドらしい。
そのテストモデルとして、勝手に主人公が選ばれたらしい…
テスト期間の3日間、主人公は『理恵』とどう接していくのだろう。
ストーリーも意外としっかりしていて楽しめるのですが、しっかりしているがゆえにと言いますか、ドールを使ったというインパクトからすると、思ったよりこぢんまりとした印象を受けてしまうかもしれません。
また、短編のオムニバス作品であり、全部クリアしても、ボリュームは少なかったです。
<評価>
コストパフォーマンスという言葉を、どういう風に捉えるのか。
価格に対するクリアまでにかかる時間で判断するのであれば、すぐに終わってしまう本作は、コスパの悪い作品となるのでしょう。
そのように考える人には、本作は絶対に向きません。
しかしね、芸術の世界だって、同じ立体物を作るとしても、木で作るのと、金属で作るのとでは、全然労力も難易度も異なるのであり、同じ土俵で比べることはできないでしょう。
繰り返しになりますが、本作で用いられているのは、一体数十万円もするラブドールです。
一体数十万円するドールを何体も使用し、様々なシチュエーションでロケをするのは、個人ではまず無理ですからね。
また、小さいフィギュアと違って、等身大ドールは重さだけでも数十キロありますし、こちらが思うように自由に動かせるものでもないですから。
それも考えると、よく作ったものですよ。
優れたゲームや小説やアニメ等に出会ったとき、こういう世界や考え方もあるのだと、未知の体験をできたことにワクワクするものです。
そういう体験を求めて、私はゲームをしているのでしょう。
本作は、こういう世界もあるのだと体験させてくれただけでも大きな意味があるし、それ故に決してコスパの悪い作品には思えないんですよね。
また、あくまでもクリアにかかる時間が少ないというだけであり、CG枚数は上記のとおりかなり多いので、CG枚数で判断するならば、むしろコスパは良すぎる作品となるでしょうし。
まぁ、ボリュームが若干不足しているのも事実でしょうし、その他、ゲームとしての面白さ等も考慮し、総合では良作とします。
しかし、長所だけなら間違いなく名作級の作品であり、唯一無二の存在としてプレイした人に強い印象を与えるのは確かといえるでしょう。
新鮮な気持ちを感じられる作品を望むのであれば、プレイする価値のある作品だと思いますね。
※ちなみに、2024年8月、オリエント工業の代表の引退に伴い、全事業の終了が発表されましたが、継続を願い強い声が届いたのか、2024年11月に新代表のもと、営業が再開されることが発表されました。
アニメや2D分野だけでなく、こうした分野も日本が世界に誇れる文化だと思いますので、今後も継続されることを望みたいものですね。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2025-03-24 by katan


