ぶりんぐ あっぷ

1990

『ぶりんぐ あっぷ』は1990年にPC98用として、ハート電子産業から発売されました。

場合によっては元祖育成SLGと言われたかもしれない、ちょっとした違いが後に大きな違いを生んだ作品でした。

<感想>

発売時期に関しては、正直なところ良く分かりません。
記憶が曖昧なのですが、発売の順番は『ぶりんぐ あっぷ』『優子物語』『ボクサーメーカー』の順であっているはずです。
調べてみても、『優子物語』が90年12月に発売しますって書かれた雑誌で、『ぶりんぐ あっぷ』は既に発売中になっていますし。
それなのに、ネットで調べると本作が91年となっていたりして、何が何だかよく分かりません。
まず90年の発売であってはいると思うのですけど。。。

さて、本作のジャンルは、表記上は育成SLGになります。
『プリンセスメーカー』より先なので、こっちが元祖と言う人もいるでしょう。
結論は定義次第になりそうなので、とりあえず先に中身を説明したいと思います。

本作は女性型人工知能であるセクサロイド、つまりは女性型アンドロイドのようなものを育てることになります。
その日のスケジュールがあって、1時間単位で何をすべきかを選択していきます。
全てを決定し終わると、それが順次消化されていきます。
1日分を1時間ごとに区切っているので、結構見ているだけの時間が長いです。
むしろ単調すぎて面白くないです。

一応パラメーターが増減することにはなりますが、1日の終わりに結果を見るパートがあります。
そこではCGがマスクで伏せられていて、パラメーターが一定以上に達していれば1枚ずつそのマスクがはがされていきます。
つまり、そのCGを見ることが目標となるわけですね。

ハッキリ言って、単調すぎてゲーム自体はそんなに面白くないです。
ADVモードがある『優子物語』や、試合のある『ボクサーメーカー』はメリハリがあるのでマシなのですが、本作は他に何もないですからね。

そういうわけで出来自体は芳しくないわけですが、それとジャンルの元祖であるかは別問題でしょう。
面白くなかったから元祖じゃないって言うのは筋が違いますからね。
もう少し詳しく考えるべきかと思います。

さて、上でも説明しましたが、本作は基本的にはスケジュールを組んで、それによってパラメーターが上下するゲームです。
そのため、形式的には育成SLGとなるのは間違いないでしょう。

でも、何かやってパラメーターが変化するのは、RPGだって同じなわけですよね。
PC88版の『キン肉マン』だって、トレーニングモードで成長させ、その後に試合をします。
それと『ボクサーメーカー』とで、一体何が違うのかって話にもなりますし。

プリメが元祖と言われるのはシステム的に育成部分に特化しつつ、育成が目的となったゲーム作りをしたからでしょう。
具体的には、結末が変化するだけでなく育成次第で姿形も変わっていく、そしてそれがゲーム進行にも影響していくという、その育成過程を目的とし楽しむゲーム作りに軸があったわけです。

他方で本作は、必ずしもそうではないんですよね。
結果的に数値が残り、それに応じてマスクがはがれていき、出来るだけ多くのCGを見ましょうってゲームなわけです。

つまり、面白さのベクトルが全然違うんですよね。
本作はマスクをはがすのが目的であって、育成の過程を楽しみ目的とするゲームではないのですから。
数値が進行度の目安みたいな機能でしかないということで、むしろ今で言うパラメーターのある調教(育成)ADVに近いかもしれません。
調教SLGとパラメーターのある調教ADVも見た目はかなり近いですが、両方プレイした人ならその明確なプレイ感覚の違いが分かると思います。
それと同じなんですよね。
本作を育成SLGだと思ってプレイすると、少し違和感を感じるかもしれません。

したがって、形式的なシステム的な元祖は本作だけど、実質的元祖はプリメ。
あるいは本作は育成ADVの亜種であって、育成SLGの元祖はプリメだって考えるのが自然なのかなと。
それに、本作まで育成SLGの範疇に含めちゃうと、育成要素のあるSLG全てが含まれかねません。
ドラクエやキャプテン翼やファイアーエムブレムとかも全部育成SLGって言うと、ほとんどの人が違うだろって言うと思います。
それと同じような違和感を感じちゃうわけですね。
結局は言葉の使い方次第なのでどちらでも良いのかもしれませんが、何れにしろ後に一大ブームを作った育成SLGの面白さのエッセンスは、このゲームには含まれていなかったわけです。
だから、名実共に元祖と言うのは無理があると思うんですよね。

<評価>

そういうわけでゲーム単体としてもいまいちで、ジャンルとしても実は元祖でないとなると評価は厳しくもなりそうです。
でも、元祖と考えるにしろ亜種と考えるにしろ、これと完全に類似した作品もなかったわけで、それなりには新鮮にプレイできたんですよね。
そのため、ギリギリ佳作扱いでも良いのかなって思います。

それにしても、惜しい作品でした。
他と違うゲームを作ろうって意思は伝わってきただけに、もう一ひねりがあればきっと素晴らしい作品になっていたでしょうし、後世に名を残せたかもしれないゲームだったんでしょうにね。

ランク:C(佳作)


PC-9801 5インチソフト ぶりんぐあっぷ

Last Updated on 2025-02-03 by katan

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