『ボッチムスメ×プロデュース計画。』は2016年にWIN用として、Kalmia8から発売されました。
読んでいて面白いという意味では、この年最高クラスでしょうね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
キツイ顔つき、高い身長、暗く空気の読めない性格……。
そうした部分がマイナス要素となり、子どもの時から孤立している橘花絵磨。
新しい学校へ進んでもその状況は変わらず、周りからは怖がられ誰も彼女に近づこうとしない。
しかし根暗な性格の絵磨はその状況に甘んじ、このまま透明な存在として卒業まで過ごせればいいと考えていた。
そんな絵磨の人生を、2人の男性が変えることとなる。
「やっと見つけた。君は……君こそが僕のミューズだ!」
「いいか、今のおまえはただの雌豚だ。
だが、おまえにも輝ける場所がある。俺が導いてやる」
子どもの時から服作りが大好きで、魅力的な個性を持つ女の子を輝かせたいという欲望を持つ帰国子女の平泉巳紀(ドM)。
幼いときからなんでもこなせる自分に退屈し、どうせなら世の中を変えるぐらいでかいことをしたいと思っている新條才人(ドS)。
そんな野望と美貌を持つコンビによる、橘花絵磨プロデュース計画が始まる!
「いや……別に私そんなの望んでませんが……」
<テキスト>
完成度よりも独自性を重視する、普段の私の方針からするならば、この作品に対してプレイする気すら起きないということも十分にありえたように思います。
あらすじだけを見ると、10年程前に放送された某ドラマと似ていますし、これといった特徴のようなものも見当たりませんからね。
しかし、普段は体験版を全くプレイしない私が、何の気まぐれか、この作品は体験版をプレイしてしまいまして。
・・・で、体験版をやってみたら、凄い面白かったと。
それで関心が強まった作品なのです。
プレイしていて、とにかく楽しかった。
それが、率直な感想となるのでしょう。
ストーリー自体は特にかわった部分もなく、普通なのだけれど、テキストが抜群に面白いのです。
テキストがここまで面白いと感じたのも、凄く久しぶりのように思います。
2016年はまだ途中なので、便宜上最高クラスと書きましたが、ことテキストだけに限定するのであれば、おそらく2016年最高の作品となるのではないでしょうか。
それくらい、楽しかったです。
作品としては、ドSとドMの二人の男性が、根暗な少女をプロデュースするというものになります。
キャラ設定としては、一癖も二癖もあるようなキャラばかりで、非常にあくの強いものになっているのですが、このキャラたちの掛け合いが非常に楽しかったわけでして。
楽しいとか、笑えるテキストといわれる作品は他にもありますが、そういうエロゲをプレイしても、私は全く楽しめなかったというケースもいくつもあります。
その楽しめなかった理由としてはいろいろあるのでしょうが、笑いをとろうとして無理にコントに仕立て上げるような、そんな不自然さを感じるものが特に多いでしょうか。
エロゲのテンプレと言われてしまえばそれまでなのだけれど、とにかく人と人との会話として不自然さを感じてしまう作品は、私はどうも違和感を覚えてしまって駄目なんですよね。
その点、本作は、キャラ自体は濃いものの、そのキャラ同士の掛け合い、やり取りに、不自然さがないのです。
一人一人のキャラの魅力もさることながら、3人の持つ関係性というか空気感というか、「間」みたいなのが、とにかく最高なんです。
プレイしていて引っかかるものがないまま、それが最後まで続くから、最初から最後までプレイしていて楽しいのです。
こういう作品は、近年では本当に珍しいです。
<感想>
その他の感想としては、上記のテキストの良さを更に引き出すものとして、音声も上手くマッチしていたのも大きいでしょうね。
本作は主人公にも声があるのですが、根暗な少女っぽさを見事に演じきっていましたし。
こういうヒロインを良いなって思うことは普段はないのだけれど、この作品に関してはとても魅力的に感じました。
本作はミドルプライスであり、ボリュームも価格相当であることから、フルプライスの作品よりは小粒な作品となるのでしょう。
もっとも、無駄な部分がないことから、短時間ながらも濃密な時間を過ごせたということで、むしろ好印象につながりやすいのではないでしょうか。
ゲームデザインについて、本作はノベルゲームではあるのですが、わりと細かくバッドエンドになりますので、一昔前のノベルゲーの構造に近いと言えるでしょうか。
この構造だから一概に良いとか悪いとかはありませんが、テンポ良く進んでいく本作のスタイルには、この構造は上手くマッチしていたように思います。
<評価>
主観面だけで判断するならば、十分に名作レベルなのでしょう。
とにかく楽しかったですから。
ただ、私は何か強烈な魅力があれば、それだけで名作とすることもあるのですが、テキストだけが優れているという場合は、それだけを理由に名作とすることはまずありません。
テキストが良いと感じるか否かは、プレイヤーの主観に特に依存しますから、とてもあやふやなんですよね。
だから、もう一つ担保となる客観的な要素というか、万人が納得しうるような明確なものが欲しいのです。
本作はとても楽しい作品ではあるのですが、明確にこれがというポイントがやや弱いこともあり、総合では良作としておきます。
でもまぁ、楽しかったことにかわりはないので、評価以上に好きな作品ですね。
Last Updated on 2024-09-01 by katan
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