穢翼のユースティア

2011

『穢翼のユースティア』は2011年にWIN用として、AUGUSTから発売されました。

萌え路線に強かったAUGUSTがシリアスにも挑戦したということで、話題性も高かった意欲作だったのですが。。。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・
悲劇は往々にして不条理なものだが、これほど不条理という形容がしっくりくる悲劇もなかった。
その日、この都市の一角が多くの人命と共に大地へと崩落した。
性別、年齢、人間性、地位、経済力……
犠牲者に一切の区別はなく、ただそこにいたという一事だけが、彼らの命を奪った。
なぜ死なねばならなかったのか。無数の死に何の意味があったのか。
答えはなく、残された人々に与えられたのは、輪郭のない茫洋たる喪失感だけだった。
後に大崩落(グラン・フォルテ)と呼ばれる悲劇だ。
あれからずっと、この都市「ノーヴァス・アイテル」には不条理の雨が降り烟っている。
上層から下層へと、都市を濡らした水は低きへ流れ、やがて牢獄に聚まり澱む。
嵩を増す汚水を取り除く術もないまま、囚人たちはただ喘ぐ。
いつの日か、この都市「ノーヴァス・アイテル」に陽が差す時が来るのだろうか。

<感想>

AUGUSTのシリアス路線ということで話題性の高かった本作。
暗殺者であったとか娼婦であるとか、確かにこれまでのAUGUSTらしからぬ雰囲気で、シリアス或いはダーク系と呼ばれるような方向性になっていました。
ハイファンタジー系でもあり、流れ的には宮廷劇とか政治的な面が強かったりもするのですが、ラストのオチとしてはセカイ系に持っていった感じですね。

ゲームシステムはノベル系のADVなのですが、共通ルートから誰かのルートへっていうのではありません。
基礎となる大きなルートが一本あって、そこから各ヒロインへのEDに派生するって感じなわけで、昔のPC98時代に比較的多く見られたタイプでしょうか。
このタイプはヒロインを掘り下げるとか萌えの追求には向いていませんが、伝えたいストーリーを強調するのには適しているわけで、シリアスなストーリーを強調するという観点からは合っていたと思います。

問題はそのストーリーなわけでして。
いつも同じことをやっていても駄目だろと思う私には、変化をしようとしたAUGUSTの姿勢自体は、とても好ましいように思いました。
そのため、期待もいつも以上にあったわけですが、シリアス・ハードと言うのはあくまでも従前のAUGUSTと比べての話であり、他と比べるとそれほどでもないというか、むしろ温いくらいです。
せっかくこういう題材を選んだのだから、もうちょっとハードに行ってもらいたかったわけで、どうしても物足りなさも感じてしまいました。

それと、主人公が最初は格好良く見えたんですけどね。
流れに翻弄されつつも~って書けば聞こえも良くなるかもですが、ようは理想と現実で右往左往しっぱなしで、周りに流されて流されて流されっぱなしに思えたわけで、むしろきっちり決断したヒロインにあれこれ言い放つ姿には、何だコイツと思っちゃうわけで、次第に好きでなくなっていきました。

テキストも良く言えば丁寧なのでしょう。
しかし、テンポが遅くて少し冗長に感じてしまいましたし、設定と言動が一致していないように感じたりもして、なかなか作品に入っていくことができませんでした。
本作については、ここが個人的には一番大きかったように思います。
それに加えてストーリー自体に意外性がないこともあり、この作品らしさを感じることはできなかったのが残念でした。

まぁストーリーが竜頭蛇尾という意味ではいつものAUGUSTなのですが、これまではストーリーそのものが見掛け倒しに終わっても、キャラの魅力と萌えという強力な要素があったわけでして。
それがここの最大の持ち味でもあったわけですしね。
しかし、上記のように今回はシリアス路線で、かつシステム的にもヒロインに焦点を当てた作品ではありませんので、必然的に萌えとかキャラの魅力が弱まってしまったんですね。
結果的に、萌えという他社には負けない絶対的要素が損なわれ、ストーリーがそのマイナス分を補えなかったために、どことなく特徴の薄い中途半端な感じの作品になってしまいました。

キャラ絵はAUGUST作品の中でもかなり好みで、むしろ、おもいっきりドツボだっただけに、正直この絵で萌え作品を作ってもらえた方が、今回ばかりはありがたかったように思います。

ちなみに、背景にはゆうろさんも参加しているようで、背景も綺麗でしたね。

<評価>

そういうわけで、意欲は買いたいけれど、
全体では印象の薄い作品になってしまいました。
得たものより失ったものの方が多い感じでもあり、
今回は厳しいかもしれませんが凡作ってところでしょうか。
まぁギリギリ佳作でも良いようにも思いますが、
何れにしろその辺りになります。
作品単体の評価はFAよりもかなり下がるのですが、
変えようとした姿勢は買いたいわけで、
むしろブランドに対する印象は良いものに変化しました。
今回はまだ過渡期なのであり、
次以降の作品こそが大事になってくるように思いますし、
これからの作品とAUGUSTの動きに期待したいものですね。

ランク:D(凡作)

Last Updated on 2024-12-13 by katan

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