『愛姉妹』は1994年にPC98用として、シルキーズから発売されました。
ご存知の人も多いと思いますが、エルフの別ブランドですね。
98時代最高のオカズゲーは何かと問われた場合、多くの人がこの作品を挙げるのではないでしょうか。
PC98のHDDに、常駐ソフトとして最後までずっと残っていたって人、私以外にも少なからずいたと思います。
<概要>
ゲームジャンルは、マルチストーリー・マルチエンディングADVになります。
感覚的にはノベルゲームなのですが、詳細は後述します。
また、本作は、従来の作品にはなかった、いわゆる「回想モード」を実装したことにより、オカズゲーの有用性を飛躍的に高めた作品でもありました。
あらすじ・・・
「私が交通事故を起こしたばっかりに・・・。」
出会いは脅迫の始まりだった。
幸絵の起こした事故をネタに体を要求する丈人。
さらに彼は、幸絵の自身が所属する学校でも有名な美人姉妹、幸絵の娘の智子、そして留美にも手をかける。
様々に感情が行き交う中で、自らを欺くかのように、ただ欲望に溺れる丈人。
最後に彼が手にするものは・・・。
<感想>
最近まで、自分が頑なまでにエロゲーという表現を使わなかった理由。
それはエロゲーなんだからエロが無きゃ駄目・・・みたいなことを言う人がいるからです。
別に18禁の指定がされているだけであって、18禁足りえる理由はエロ以外にもあるわけですから、18禁からエロへと直結するわけじゃないのにって思うからです。
(最近は、面倒になったことと、もはやアダルトゲームでなくて単にエロゲだよねということで、ゼロ年代以降の作品に対してはエロゲという言葉も使うようになりましたが・・・)
とは言うものの、それは何でもかんでもエロの有無で語られるのが嫌なだけ。
エロが目的のゲームもそれはそれで当然OKであり、何でもプレイします。
そもそも、一時期のようなエロ薄ゲームが氾濫する方が、本当は異常だと思いますしね。
ところで、『愛姉妹』は今風に言えば抜きゲー、当時の表現ならばオカズゲーと呼ばれる類の作品ですが、こういうのってキャラデザが大事だと思いません?
これが例えば泣きゲーならば、仮にキャラデザが変でもシナリオさえしっかりしてあれば、それで十分だとも思えます。
でも、オカズゲーで可愛くないヒロインって嫌じゃないですか。
可愛くないキャラに脱がれても嬉しくないですしね。
しかしながら、98時代においては、エロ重視の作品のヒロインについては、結構ビミョ~なデザインって多かったです。
そんな中にあって、『愛姉妹』のヒロインの可愛さは別格でした。
そもそも、ゲーム画面がパケ絵に勝っているレアケースでもありますし。。。
本作は陵辱ゲーでもありますが、陵辱ゲーでこんなに可愛いキャラは、おそらく初めてだったのではないでしょうか。
そもそも沙織事件の影響もあってか、90年代前半にはエロの薄いゲームが増えました。
一番影響が出たのは92年になるでしょうか。
PC98のアダルトゲームというと、私はインモラルさや淫靡さの漂う作品を思い浮かべるのですが、そうした作品や激しいエロで構成されたゲームが再登場するのは、大雑把に言えば93年の後半くらいからになります。
また、「オカズウェア」と呼ばれる実用性特化のゲームが出だしたのも94年頃からですから、そうした実用性特化作品の絶対数がまだ少ない時期に本作が出てきたので、より一層インパクトがあったのです。
だからPC98時代の当時を知る人の多くが、『愛姉妹』を名作として認知し、いつまでも記憶に残り続けているのでしょうね。
ここら辺の感覚は、当時を知らないと伝わらないかもだけど・・・
(リメイク版は黒歴史だしね。。。)
歴史的な背景を抜きにしても、やっぱりヒロインらは単純に可愛かったです。
この作品を知った時には、何が何でも買わねばと思ったものですし、実際プレイしてもグラフィックの満足度は非常に高かったです。
<ゲームデザイン>
ゲームジャンルはノベル系ADVでも構わないようにも思いますが、厳密にはコマンド選択式との併用ですね。
汎用コマンドがあるので、むしろ基本的にはコマンド選択式とも言えます。
もっとも、河原崎や野々村のように、選択肢を選ぶことで数十に物語が枝分かれしていくタイプでもあります。
そうした分岐を楽しむ作品ですので、本作はコマンド選択式でありつつも、楽しみ方のベクトルとしてはノベルゲーなのでしょう。
本作のような選択肢による多数の分岐という形式は、この年に飛躍的に増えた形式でもありました。
当時はノベルゲーという言葉が定着していないこともあり、ノベルゲームという言葉ではなく、マルチストーリー・マルチエンディングADVと呼ばれていました。
当時のマルチストーリー・マルチエンディングADVの大半は、今現在だとノベルゲーと呼ばれる作品と同じ構造ですので、実質的には両者はかなり重なります。
もっとも例外的に、本作のような汎用コマンドを用意しつつも、選択肢による分岐が多数というタイプもありましたので、必ずしもイコールとまでは言い切れません。
したがってマルチストーリー・マルチエンディングADVという言葉は、それらを全て含む広義の概念として機能していたと言えるのでしょう。
だからもし、古い書籍や記事とかを見て、そこにマルチストーリー・マルチエンディングADVって言葉があれば、言い回しこそ今とは異なるものの、これはノベルゲーなんだなと思ってもらっても、まず大丈夫だと思います。
ところで、物語が分岐していくということで、一見すると『河原崎家の一族』などと同じタイプに思える本作。
しかし、河原崎とかが展開に応じて分岐していくのに対し、本作はヒロインの凌辱が目当てとなりますし、エンディング時には恋愛感情の芽生えることもあるわけで、物語が枝分かれして派生していくというよりも、ヒロインとの関係性に物語が収束する作品と言えます。
したがって、エンディングも、河原崎のような自分の選んだ行動の結果というよりも、ヒロインとのその後みたいな個別EDになっています。
そういうヒロインとの関係性を描くという意味では、近年のノベルにおける個別EDに近いと言えるのでしょう。
河原崎とかだと今日のノベルゲーと性質的に異なる部分もありますが、ヒロインに従属したストーリーという今のノベルゲー構造を遡るならば、意外と本作辺りに行き着くのかもしれませんね。
その点でも、本作には意義があるのでしょう。
また、オカズゲーと言うからには、いつでもすぐに役に立たなければ意味が薄まります。
でも、今のゲームと異なり、当時は回想モードってなかったんですよ。
各ユーザーがそれぞれ自分の好きな場面をセーブデータとして残すことで、対処していましたからね。
ところがこの『愛姉妹』で回想モードが付き、そういう手間を省いてくれました。
これにより何時でもエロシーンが見られるようになり、オカズゲーというジャンルの有用性を飛躍的にアップさせたわけで、本作にはそんな大きな意義もあったのです。
<ストーリー>
ストーリー自体は陵辱ゲーというか、あらすじ自体はわりとどうでもいい気が・・・
とにかく可愛いキャラを陵辱できる、それだけで満足でしたし。
それに上述のいろんな付加価値がありますからね、それだけで十分に満足してしまうのです。
とにもかくにもあの可愛いキャラと、業界最高レベルのエルフの塗り、それが最大のウリでしょうからね。
いや、こう書くとちょっと誤解も与えかねないのかな。
確かにあらすじや基本的な展開は、特にかわったところはないのです。
弱みを見つけて脅すってだけですから。
ただ、官能小説を書いているプロの作家もテキストを褒めていましたし、そういうプロの観点からもテキストは良かったのでしょう。
正直言って、エロテキストの良し悪しに関して、私はあまり違いを示せません。
あまりこだわりがなかったものですから。
もちろん楽しめたゲームは、テキストが良かったと感じたからなのでしょうが、そのエロ描写が単に自分にあっただけなのか、それとも客観的にプロが見ても優れたものであるかなのかについては、それまであまり意識しなかったこともあって自信を持って言えないのです。
でもプロも参考になるとの意見を聞くと、単に私に合っていたというだけでなく、純粋に優れていたのでしょうね。
また、ここからは補足になりますが、コメントをいただいて確かにと思った点として、本作は、主人公の描写が優れていたのでしょうね。
官能小説にしても、エロゲにしても、年相応のキャラを描くというのは、結構難しいものです。
官能小説だと、高校生主人公なのに中身がオッサンくさい作品が結構あります。
他方、後のエロゲの抜きゲーですと、逆に言動が稚拙すぎるケースも多いわけでして。
等身大で、高校生の陵辱者らしさを出せている作品って、確かにほとんどないのかもしれません。
他の抜きゲー等に感じるような違和感がないことから、本作はすんなりと楽しむことができ、いつまでもユーザーの記憶に残り続けるのかもしれませんね。
それから、ヒロインについては、当時は、お姉さんの留美が一押しでした。
ただ、いくら陵辱されても健気に主人公のことを思い続ける妹の智子がね、なんかプレイをし続けていると、ある種の狂気を孕んでいるように見えるわけでして。
そのため、年を経るごとに、妹の方の印象が強くなってきています。
お母さんも凄く魅力的でしたし、この手の作品にしては珍しく、どのヒロインも魅力的でしたね。
<評価>
この作品が出た時期の事情であるとか、エロに関するテキストの良し悪しであるとかは、ゼロ年代頃になって始めたシナリオ重視の人には解らない観点でもあり、それがリアルタイムでプレイした人との温度差にもつながるのでしょう。
リメイク版の出来が酷いので、それで更に温度差が生まれていましたし。
だから当時を知らないと本当の良さが理解しにくい作品なのですが、単純に当時最高のオカズゲーとして高い有用性があるだけでなく、グラフィックやシステム面においても大きな意義を有した作品であり、抜きゲー史上に燦然と輝く名作と言えるのでしょう。
ランク:A(名作)
Last Updated on 2024-10-12 by katan
コメント
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愛姉妹のテキスト面での良さはズバリ、主人公のバランスです。
鬼畜に偏らず、ヘタレに偏らず。
高校生が、無理に鬼畜ぶろうとして、しかし高校生ゆえに未熟で、
でもヘタレで女性側になめられはせず、且つお人よしでもなく。
エロ漫画や官能小説なんかで、陵辱者が高校生ぐらいの場合、
どう考えてもこの人格は大人の男だろ、というのが非常に多いです。
この「愛姉妹」のOAV版ですらそうです(リメイク版が下敷きに
なってるようなので、そのせいかもしれませんが)。
その点、オリジナルの「愛姉妹」は、高校生陵辱者をきちんと
リアルに描けており、その点では今もって私は、これに匹敵する
作品を知りません。
絵や分岐の構成なども見事ですが、この、主人公の描き方こそが、
愛姉妹の魅力の大きな一点であると思います。
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官能小説は語れるほどは読んでいないので思い込みもあるかもしれませんが、
年齢以上に大人びているってのは分るように思います。
逆に今のアダルトゲームですと、必要以上にガキっぽい気がしますし。
どちらも極端になりやすい中で、
『愛姉妹』は匙加減が抜群だったということですかね。
> リメイク版が下敷きになってるようなので
リメイク版は、あの絵に納得がいかず、黒歴史扱いでプレイしていません。
なので詳しくは知らないのですが、グラフィックだけでなく、
テキストの変更もあったということなのでしょうか。
98版のファンは何人も見かける0のに、
WIN版で初めてプレイして褒めている人を見たことがないのですが、
絵以外にも違いがあるのだろうかと疑問には思っていたのですけれど。
愛姉妹のシナリオ担当の蛭田さんは文学的で描写が緻密で行為をしているされている人物の心理描写も丁寧にされていて
河原崎家の一族2発売の際には発売当時受けの良かったラノベ調の文章表現とは大きく乖離していて昭和臭いとのユーザーレビューの声も有ったりしましたが
私は現在においても優れた文章表現をされていると思います。
キャラデザについては旧版担当の原画さんは公表されていないので憶測となりますが
Win版発売の前に劇場公開された某一般アニメのキャラデザをされた方だったので非公開のままで竹井さんにバトンが渡されたのかなと。
竹井さんはバストアップされたCGは魅力ある絵柄ですが指といった細かい身体部位の表現が行き届かない所があるのでどうしてもエロメインや凌辱要素のあるゲームと相性が悪い印象が。
ゲームでは卒業とかファンタジー小説書籍でイラスト担当されてい時も有り同級生やドラゴンナイト4との相性が良かったのでしょうが。
あの事件について当時を知らない方々がズレた認識でネット記事や配信等で語られている情報が実しやかに認識され始めているので触れさせていただきます。
16bitセンセーションのアニメ化以降、原画家等の特定視点でのアダルトゲーム業界の変遷が一般論になっており
根本的なアダルトゲームというか国内のゲーム業界の長らく続くあの事件も含めた問題が見落とされたまま
アダルティな要素の需要はあるものの今はアダルティなものが薄められて作られてしまっている事についてコメント致します。
あの事件が起こった際にソフ倫規格を作ってお目こぼしと先送りをした結果が今のアダルトゲーム業界の事相を生んでしまっているのだと私は思います。
(当時の設立までの流れは初期設立メンバーかつ草案を作成されたTADAさんの回顧録が現存し公開。)
https://hannylaboratory.blogspot.com/2021/09/1992.html
一般ゲームでもCERO規格が制定から20年以上経ち時代に合わない規制で改正を問う声も有ります。直近だとドラクエⅢ(HD-2D)のキャラ。
ある映像倫(ビデ倫)も紆余曲折し変遷。
精神的に大人になって無い方にはショッキングな映像や内容になっています。警告はしましたよ?
後々この作品を見たり遊んだから悪影響を受けて問題を起したとか言わないで下さいよ?
あなたが住む地域では理解できない文化や風習あるいはフィクションがこの作品には含まれています。
精神的に大人であるならば許容できるだけの度量を持ってください。
自分が理解できない内容だからといって作品をそのものを非難しないでください。
子供でも理解できる文章で書けばこういった事をクリエイターは強く主張できず大変だなと思います。
近頃は創作物に何故かDEIやらポリコレ要素も考慮しなくてはいけないので今の方がより一層大変そうですが。
ソフ倫規格等を守ってアダルトゲームを作ろうとするとインモラルさや淫靡さの漂い過ぎるものは色々規制ワードに引っかかってしまうので
とりあえず規制に引っかからない範囲でエロいワードと要素を盛り込んで人気原画CG頼みのものを作るか(90年代後半)
泣きゲー要素が当たったので追従してシリアス要素と感動要素と学園ものをシナリオ書ける人を見つけて人気原画家CGを付けて織り込んでみよう(00年代~)
シナリオ重視の多くの顧客は担当していたライターと共にラノベがメインになり、エロ要素有り系のソシャゲによりほぼ無料でもエロ要素が楽しめるようになる。
そんなご時世の中
シナリオライターが登場人物年齢まで描写視点を技術的に落せない上げれないことも有るでしょうが
下手に登場人物年齢としての描写に拘り過ぎるとリアル過ぎて悪影響を与えると謎の配慮を求められストップがかかる事まま有り得るので
色々と今クリエイターは表現の幅に制限をかけられつつも模索を考えていて苦しんだ結果
あるいはとりあえず今を乗り切りウケれば良いとはっちゃけた結果ではないかなと。
>灰の風来人さん
竹井さんは、私は『同級生2』とかの頃から既にデッサンが崩れつつあると思っていましたが、仮にそれは早いとしても、90年代後半には癖が強くなってしまい、少なくとも一般受けする絵柄ではなくなっていたと思います。
どう考えても、愛姉妹向きではないと思うんですよね。。。
>ズレた認識でネット記事や配信等で語られている情報が実しやかに認識され始めている
「16bitセンセーション」は、原作の方は読めるのですが、アニメの方は全然面白くなく、見ていなかったのと、あと、最近のネット記事や配信等に興味がなかったので、あまりよく知らないのですが、何か変な方向で語られることが増えているのでしょうか。
TADAさんの回顧録を読んでも、TADAさん自身が奔走したことを除けば、ソフ倫の目的等は、うんうんそうだよね~って感じで、特に目新しいものでもなかったと思いますし。
今のシナリオライターは、分量を求められたり、書いた分量で金額が決まったりとも聞きます。
そうなると一杯書けという発想になるでしょうが、それって、推敲して無駄をそぎ落とす小説の作り方とは真逆になりかねないわけで、そりゃ良い作品は構造的に作れないよなと思ってしまいます。
流通の関係で、売れ線でないとそもそも作らせてもらえないというは話も聞きますし、いろいろなしがらみや制約の中での制作も大変なのでしょうね。