『Love Split ~5番目の季節~』は2003年にWIN用として、rougeから発売されました。
大学生の恋愛を真摯に扱った、比較的珍しい恋愛ものになります。
<概要>
左右に開いたふたつのピン――
まるでそのように、『Love Split』の物語は始まる。
1つのピン、エレナ編──。
ようやく大学合格を果たした主人公・花丸。合格発表の場で彼が目にしたのは、自分の受験番号とひとりの上級生──北条エレナだった。
彼女がボウリング部に所属していることを知った花丸は、入学と同時に入部を目指すが、なぜかエレナは、入部を認めないと言い出すのだった。
呆然とする花丸の耳に、双子の弟・風丸の声が耳に響く・・・・
『だから、やめとけって言ったんだ』
もう1つのピン、ルナ編──。
二浪の末に合格を果たした花丸。
だが、いっしょに合格を目指したいとこ・ルナが手にしたのは、浪人生活だった。
子供の頃から思慕の対象だったルナ。
久しぶりに再会した彼女に、さらに強く惹かれる花丸だが、お兄ちゃんと従妹という一線を踏み越えることが出来ない。
その花丸に、親友の青山はルナとデートさせてくれないかと頼み込んでくる。
気が乗らないながら電話する花丸に、ルナは・・・・。
<ゲームデザイン>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
個別ルートの前座としての、いわゆる共通ルートは本作にはありません。
その代わりに開始時に心理テストがあり、幾つかの項目に答えることでエレナ編とルナ編のどちらかが始まります。
両方のストーリーに関連性はなく、2本のオムニバスストーリーと捉えることもできるでしょう。
もっとも、ルナ編からエレナを選ぶというようなこともできますので、その範囲での関連性はあります。
ゲーム内の期間は1年あるのですが、必ずしも毎日描いているのではなく、必要なイベントだけを取り出して扱っています。
共通ルートの排除という構造と相まって、必要なことだけを描き、無駄な部分は描かないという姿勢が伝わってきます。
萌えというのは、ある意味無駄な日常の繰り返しを通じて生み出されるものです。
本作は絵柄も萌えとかけ離れていますし、テキスト上の萌え描写とも離れており、この時期の恋愛ゲーとしては珍しく、萌えを排除した作りになっています。
そのため、主流の萌えゲー好きには向いていないのでしょうが、無駄がないことから飽きることなくだれずに楽しめました。
削っても支障のない無駄なギャグや日常からなる共通部分は、個人的には存在自体が害悪に感じられることもありますので、本作のような構造の方が今は好感が持てます。
<感想>
本作のシナリオ担当は、後の『巨乳ファンタジー』でも有名になった鏡裕之さんでして。
鏡さんがトレンディードラマを書いたら、こうなったというような作品ですね。
エレナ編ではボウリングを交えながら、ルナ編では受験を交えながら、大学生の真摯な恋愛を描いた作品です。
こういう作品は、もっと増えても良いと思うのですけどね~
何で増えないのだろう?
エロゲーマーのみなさん、そんなに高校生が好きなんですか。
自分は大学生の物語とか、社会人の物語とか、逆に完全に小学生目線の物語とか、そんなのが読みたいですけどね。
真面目な恋愛ということで特別なことはないのですが、結果的に今のアダルトゲーム市場では珍しい作品になっていますので、その点では貴重な作品と言えるのでしょう。
少し気になる点に入っていきますと、ちょっとご都合主義っぽいところがあるのもライターらしいし、そんなマイナス要素を吹き飛ばすような熱い展開や、気にならなくさせる文章の上手さもライターらしいと言えるのでしょう。
良い意味でも悪い意味でも鏡さんらしいのですが、しいて言うならば、本作のような現実路線の方が上記のマイナス要素が気になりやすいわけでして。
実績あるベテランライターだけに様々な方向性の作品を書けるのでしょうが、本質的には本作の様な小さい舞台でチマチマした物を書かせるよりも、巨乳ファンタジーの様な大きな舞台で大胆に描かせる方が向いているのでしょうね。
細かい点を挙げると、丁寧に描こうとする姿勢も、本作ではプラスマイナス両方に作用したのかなと。
ボウリングは誰でも馴染みがあると思いますが、それ故に結構我流でやってしまい、今更人に聞くのも・・・って人もいるでしょう。
まぁ、私自身がそうなのですが。
だからボウリングのフォームとか細かい部分も描かれることで、今更ながらにそうかと学んだものです。
他方で、受験関係は今更と思う人もいるでしょうね。
ルート単位だと、ルナ編はぶっちゃけ要らなかったです。
リアルでもいそうですが、馬鹿なことを甘える女性は張り倒したくなるものでw
2本しかないストーリーの1本が駄目だと、残りが1本になってしまいますからね。
もう一方が良かったとしても、価格に対する満足度も下がってしまいます。
そのエレナ編ですが、こちらは良かったです。
十分に読み応えがありました。
繰り返しになりますが、大学生の真摯な恋愛を扱った作品は少ないので、かえって新鮮に感じられましたからね。
ただ、エレナは上級生で女王様的存在で高嶺の花っぽく登場したのですが、主人公を突き放す理由が、主人公の双子の弟に振られたからというのでは、せっかくの設定が水の泡になってしまうように思うのですが・・・
<グラフィック>
大きな目の萌え絵を業界における標準とするならば、本作のキャラの目は標準よりも小さいです。
その点で好き嫌いが分かれそうですが、本作は恋愛ゲーであっても萌えゲーではないですからね。
その意思表示という意味でも、作品に合っているという意味でも、これで良かったのだと思います。
問題はその先で、イベントCGとか一部では凄く良いのです。
しかし横顔とか構図によっては酷く崩れていて、良いCGと悪いCGの差が極端になっています。
ここまで差がある作品も珍しいですね。
<評価>
こういう作品がもっとやりたいのだよという意味では、非常に自分好みです。
もっと増えて欲しいという願望を込めるのならば、また作品内の良い部分だけを見るならば、良作扱いでも構わないかもしれません。
しかし、各要素で良い部分だけでなく、気になってしまう部分もあったため、総合では佳作としておきます。
気になる点も多く無条件では褒められない作品ではあるものの、こういう作品はもっと増えるべきだと個人的には思うのですけどね。
とりあえず、ライターのファンはもちろんのこと、萌えとは関係ない真摯な恋愛ゲーをやりたい人には今でもオススメです。
Last Updated on 2025-08-18 by katan



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