トワイライトゾーン3 ~長くて甘い夜~

1989

『トワイライトゾーン3 ~長くて甘い夜~』は1989年にPC88用として、グレイトから発売されました。

前作の続きとなるシリーズ3作目。
ストーリーで考えさせられるようなテーマ性をもった初の恋愛ゲームでしたね。

<概要>

『トワイライトゾーン3』は、トワイライトゾーンシリーズの3作目になります。
前作である2と今作は、同じ主人公とヒロインです。
もっとも、2のあらすじは今作の冒頭で説明されますので、一応本作からのプレイでも問題はありません。

ただ、前作をプレイしていると、また違った思い入れが生まれるかもしれません。
そのため、できれば2からプレイした方が良いでしょう。

ゲームジャンルは3DタイプのRPGで、これは2作目と同様です。

<感想>

さて、前作のネタバレになってしまうのですが、本作の冒頭で説明されるので構わないですかね。
前作で主人公は、恋人の陽子を求めて「なぎさの館」に突入しました。
この「なぎさ」というのは、陽子の飼い猫の名前です。
つまり、陽子を案じた主人想いの飼い猫が、主人公の陽子に対する気持ちをはかるために、前作の舞台であるなぎさの館を作ったということですね。
そして、なぎさの課した試練を乗り越え、主人公と陽子は互いの絆を確かめ合います。
ここまでが前作のお話になります。

前作は、まだナンパゲームばかりの時代に、愛を描いた作品でもあり、存在自体がまだ珍しいものでした。
そして、せっかく前作最後で綺麗に終わったはずなのに、本作冒頭で主人公は浮気をしてしまいます。
しかも、浮気相手である玲子は、陽子の幼馴染。
ある日、主人公と玲子がデートをして帰ってくる途中に、偶然陽子に見つかってしまいます。
・・・そういや、こういう修羅場った場面のあるゲームって、これより先にあったかな?
あまり興味のない分野だったことから記憶が乏しいのですが、もしかしたら本作が初かもしれませんね。

さて、陽子を怒らせた主人公は、陽子への愛を再認識しつつも、再びなぎさによって館に閉じ込められます。
(けなげな猫ですよね。そして、ことあるごとに猫に閉じ込められる主人公って一体・・・)

館といっても、別に猫がせっせとリアルに作るわけではなく、当然ながら精神的なものなんですけどね。
前作と異なり今作では、既に現実ではないと分かっていることもあって、そういう部分が更に顕著にあらわれています。

というのも、館は4階建て+地下となっていて、1階は現在なのですが、2階以上は過去となり、地下は未来という構成になっているのです。
1階で現在の玲子に会うと、陽子の理想の男性にならなければ、陽子に会えないと言われます。
そこで各時代の陽子が求める理想の男性の条件、「楽しく、優しく、力強く、豊かな、賢い男」を満たし、陽子に認められる男になることが目的となります。

各階には、幼女時代、小学生時代、中学生時代と、幼き頃の陽子や玲子がいます。
過去の時代の陽子は幸せなのですが、未来に行くと悲しい人生になっています。
そりゃそうですよね、彼氏を幼馴染に寝取られたんですから。
しかも最後には、一人身の孤独な老人になっていますし。
幼女姿から老婆姿まで描かれたヒロインってのも、おそらく本作が初めてでしょうね。
まぁ、ヒロインの老いた姿を見たいかって言われると、ちょっと微妙ですが。

ここは何気に難しい部分でもあって。
私は時間が経過したのであれば、それに伴い外見も変化すべきだと思います。
幼ければ幼い容姿で、少女になれば少女の容姿でと。
成長する姿を見ることで幼馴染なんかは感情移入度も増しますし。

でも、別のゲームの感想で見かけた中にあったのですが、真性なロリな方によると、少女の姿を見せただけでも、それはもう劣化だそうです。
しかも、変化しないことが二次元の良さなのに、劣化した姿を見せるとは何事だとなるようでして。
その意見を初めて目にしたときは、そんな考えもあるのかと驚いたものですが、本作のように、ヒロインの老いた姿を見せられると、そういう気持ちも少しは分かる気がしますね。

いずれにしろ各種イベントを通じて、プレイヤーは陽子の人生を追うことになり、それに伴い感情移入度もかなり上がってきます。

本作はマルチエンド方式ではないので、陽子と玲子のどちらを選ぶのかという作品ではありません。
しかし2人の女性の間で葛藤しつつも、最後は恋人への愛を貫く作品であり、恋愛ものらしい恋愛ものがまだほとんどなかった時代だけに、ここまで正面から愛を問いかけた作品はほとんどなかったでしょうね。
恋愛ゲーの変遷という意味では、非常に大事な作品と言えるように思います。

また、2人の女性の片方を選ぶということは、もう片方とは結ばれないということを意味します。
何年か後に「Kanon問題」とか言って、選ばれなかったヒロインはどうなるのかと論争を始める人が出てきました。
正直なところ、私はその論争に全く興味がありませんでした。
作品は描かれていることが全てであり、描かれていない部分の話を考えても、そんなのは答えがでるわけもなく時間の無駄だからです。
そもそも、作品外の話は完全に脱線した話ですからね。

しかし本作の場合、選ばれなかった陽子の悲しいその後の人生が描かれています。
主人公と結ばれれば幸せになるのに、結ばれなかったらこういう悲しい人生になるのだと作中で描かれています。
最終的に、主人公は陽子と結ばれることになるのですが、主人公に選ばれなければ陽子はこうなるのだとか、じゃあ逆に陽子とハッピーエンドを迎えたのならば、玲子はどうなるの?ってつい思ってしまいますよね。

私の姿勢は、考えても仕方ないだろってものなので、あまり深く気にしないのですが、本作がなまじ作中で扱っているだけに、こういうところが凄く気になった人もいるように思います。
そういう人であれば、本作に対する思い入れも更に増したでしょうね。

今のアダルトゲームユーザーの大半は恋愛系の作品を好みますし、もちろん恋愛の絡まない作品もあるのですが、そういうのはマイナーになりがちです。
しかし時代が変われば好まれる物も変わるわけで、80年代は逆に、恋愛系の作品があっても注目する人が少なかったのでしょう。
私自身も推理系だのSF系だの、そういう類ばっかり注目していましたからね。
そのような時代背景もあり、知名度が低くなりがちなのですが、もし今のユーザーにこの頃のアダルトゲームのRPGをやらせたら、案外一番好評を得るのは本作ではないかなと思うのです。

<ゲームデザイン>

さて、上述のようにストーリーやプロットに秀でた本作ですが、問題があるとすれば他の部分なのでしょう。
本作は3DタイプのRPGになります。
前作は自分でマッピングする必要があり面倒でしたが、今作は一度通った場所はマップとして表示されますので、前作よりも面倒さがなくなっています。
ゲーム部分が弱点でもあった前作よりは、確実に進化していますね。

戦闘も女の子と戦うのですが、これはぶっちゃけSEX勝負です。
通常攻撃はカーソルでどこを愛撫するか選ぶものですし、敵をいかせることに成功すると、お金代わりの下着をゲットできます。

アダルトゲームらしいアレンジはなされているのですが、格別に面白いというほどの内容でもないですし、斬新さでは前年の『カオスエンジェルズ』より劣るという点で、ゲーマー視点からは『カオスエンジェルズ』の名の方が挙がりやすいのでしょう。
前作よりも進化はしているものの、その辺が有名になりきれなかった理由の1つとも言えるでしょうね。

<グラフィック>

アダルトゲームの売れる一番の条件は、いつの時代もグラフィックにあります。
本作と同じ89年には『ドラゴンナイト』が発売され、ドラナイは確か10万本以上売れたんですよね。
PCの普及率を考えれば、とんでもない数でしょう。
もっとも、『ドラゴンナイト』はゲーム性も優れていないし、ストーリーなども優れてはいません。
89年はエルフの生まれた年ですから、後ほどのブランド知名度や信頼性もありません。
極端に言えば、完全に絵だけゲーのようなものです。
でも、とにかく売れたから、皆やってるから知名度が高いのです。

各年代の名作を挙げるような企画を何度も目にしますが、大抵は古い時代の作品は売れていた作品を挙げていて、最近の作品は売れてないけど俺にとっては名作・・・みたいなのが選ばれやすいです。
最近の作品は自分でプレイしていたり、ネットで情報が得られやすいので、内容で判断ってなりやすいのでしょう。
しかし古い時代はそれができないから、知名度の高い売れたゲームが選ばれがちなのでしょうか。

みなさん、自分にとっての名作があると思いますが、それは全部が全部、売上上位に入っていますか?
必ずしもそうではないでしょ。
売れたのと内容が良いのとはいつだって別なのですよ。
本作のグラフィックは残念ながら、良く捉えても平均レベルなので、『ドラゴンナイト』みたいには売れなかったし、それ故に後世に名が残りにくい面があったように思います。

まぁ、実際にプレイしてみると、インパクトはあったんですけどね。
ヒロインらが各年代で年齢も外見も異なるように、敵も時代に合わせて変化するのですよ。
だからロリ状態で登場したときもあれば、ババァになって登場というのもあるのです。
「デカパイだったサユリちゃん」とか、乳が垂れ下がって、アバラ骨が浮き上がった老婆の裸が出てきても、普通はトラウマにしかなりませんよ。
老婆の垂れ乳萌え~とか、アバラの浮かび具合が芸術的だよね~とかって盛り上がれる猛者なら、或いは一生物の作品だったかもしれませんけれど。

<評価>

元々、私があまり関心を抱いていない分野の作品だったので、当初はそれほど好きな作品ではありませんでした。
しかし、その後の世間の関心やらを見るうちに、実はこれ凄かったんじゃないかと思うようになったわけでして。
総合でも十分名作といえるでしょう。
本来であれば、もっと高く評価する人がいてもおかしくはないでしょうね。

上述のようにグラフィックやゲーム部分が特別秀でているわけでない本作は、80年代の他のRPGより埋もれやすいのも仕方ないのかもしれません。
しかし、内容的には一番、後のユーザーにも興味を持ってもらえそうでもあり、ストーリー面に関しては間違いなくこの時代屈指のRPGと言えるでしょう。
少なくともエンタメ的な作品ばかりだったこの時期にあって、ここまでテーマ性を持ったRPGは他にないと思います。

シナリオを重視しますとかって、ユーザー側で特定要素を重視するのも一向に構わないですが、少なくともそういう人が安易に過去の名作とされる作品に飛びつくことは、無謀なのでしょう。
特に80年代の作品の場合、有名になったのはゲーム性やグラフィックが秀でているからであり、ストーリーだけ優れているような作品は、むしろ埋もれた作品の方に混ざっているのだと、それくらいの認識でいた方が良いように思います。
その時代その時代でどこに注目されるかは変わりうるのであり、それによって名が挙がってくるタイトルは代わってくるということで、不遇な作品でもありましたね。

ランク:A(名作)

トワイライトゾーン3

Last Updated on 2025-05-11 by katan

コメント

  1. SECRET: 0
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    DOS時代のストーリー性の高いRPGは、ストーリー性の高いADV以上に埋もれやすいですね

  2. SECRET: 0
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    そうですね、確かに情報が得られにくくなっており、非常に埋もれやすくなっているように思います。

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