サメと生きる七日間

2022

『サメと生きる七日間』は2022年にWIN用として、CUBEから発売されました。
ラノベ小説家の三河ごーすとさんが原案とシナリオを担当した作品でした。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・とある夜、深海恭平はふと気づくと見知らぬ浜辺に倒れていた。
周囲を見渡せば、そこには広々とした海、そして砂浜……
混乱に溺れる中、それとは別に、頭に妙な違和感を覚え、おそるおそる確認をしてみると──「あぐ、あぐ」どこかサメっぽい見た目をした全裸の少女が、恭平の頭をガシガシ噛んでいた。
咄嗟のことに驚き、その場から逃げ出した先で、今度は夜中にもかかわらず水着の女の子に会ったかと思えば、「よかった??っ! 生きてたよぉ??!」
と抱き付いてきたりと、もはやわからないことだらけ。
恭平の幼馴染みだと主張する抱きついてきた女の子の話に耳を傾けていると、先ほどのサメっぽい見た目の全裸少女が追いついてきてしまう。
逃げ出そうと慌てる恭平を尻目に、全裸サメ少女はおもむろに恭平を指さし―「くう。このひと、おそわれた」固まる空気。
幼馴染みだという女の子からはドン引きの冷たい視線が恭平へと注がれる中、全裸サメ少女は、より正確な言葉を紡ぐ。
「くう。このひと、‘‘に、’’おそわれた」
鳴り響くパトカーのサイレン。かけられる冷たい手錠……
深海恭平、意識を取り戻してからわずか数分にして、早くも社会的危機――!
謎に満ちあふれたこの島で、恭平は様々な女の子との出逢いを重ねながら、激動の運命へと巻き込まれていく―

<はじめに>

上記のとおり、本作は、ラノベ小説家の三河ごーすとさんが、原案とシナリオを担当しています。
90年代までは、小説家がアダルトゲームに参入したり、漫画家がアダルトゲームに参入したり、アニメーターが参加したりと、他所からアダルトゲームに入ってくるケースも少なからずありました。
そして、それが業界の多様性を生んだり、競争を促すことにもつながっていたわけですね。

しかし、ゼロ年代に入ってからは、他所からの参入がほとんどなくなり、何作かエロゲのシナリオを手掛けたあとは、ラノベに移ったり、アニメの脚本に移ったりと、専ら出ていくだけになりました。
出ていくだけでは、エロゲ業界に優秀な人材がいなくなりますし、多様性も損なわれてしまいます。
ゼロ年代のエロゲのシナリオライターって、なんか小説家等になるための研修期間のような、そんな一段低い立場になってしまった感が強いんですよね。
業界が盛り上がるためには、もっともっと他所からの参入があった方が良いと思います。
そういう意味では、本作のような存在は、素直にありがたいと思います。

なお、三河ごーすとさん自身は、『神様のような君へ』でも一部ルートを担当しています。
そのため、本作が純粋なエロゲデビュー作というわけではないのですが、原案から担当した、三河さんの作品と呼べるという意味では、本作が初と考えて良いのかもしれません。

<感想>

さて、本作は、ストーリー重視作品になります。
具体的には、6人のヒロインの個別ENDを見ると、その後にまとめとなるグランドルートが登場するタイプになります。
ヒロインの数といい、最後にグランドルートがある構造といい、ゼロ年代前半のエロゲって感じの構造ですよね。

本作は、キャラも可愛いですし、主人公に行動力がありますし、それによりテンポ良く進んでいきます。
ヒントにより攻略も楽ということもあり、どんどん読み進めていけます。
ストーリー重視の作品が最近は非常に少なくなっていることもあり、ストーリー重視の作品がプレイしたいというのであれば、本作は多くの人が楽しめる内容になっていると思います。
少なくとも、2022年の上位クラスには入ってくるでしょう。
ストレスになる部分がないので、私もプレイしていて楽しかったです。

ただ、そのうえで名作とかそういった辺りに達しているかとなると、少し疑問も残るかもしれません。
良くも悪くもB級感の漂う本作は、これといった本作ならではの特徴はないように思います。
また、ストーリーゲーという構造上、キャラゲーよりヒロインの扱いが薄くなり、キャラゲーを求めている人には、その部分が少し弱く見えるでしょう。
もちろん、キャラゲーとしての側面が弱くとも、ストーリーゲーなのだから、ストーリーが良ければ、何の問題もありません。
しかし、その肝心のストーリーも、普通には楽しめるのですが、ここまで引っ張るほどのネタかというと、少し疑問が残ります。

そもそも、ゼロ年代前半のストーリー重視作品の多くは、複数のヒロインを攻略した後でないとグランドルートが見られず、その構造自体が欠陥を有していたことから廃れていったわけです。
つまり、グランドルートなんて用意されると個々のヒロインの扱いが弱くなり、恋愛ゲーとしては消化不良になりかねません。
だから差別化するルートを廃したキャラゲーが増えていったわけです。
また、メインストーリーに興味があるというストーリー重視の人の場合、共通ルートと個別ヒロインENDを全部見ないと本筋に入れない構造は、目当ての部分に入る前に苦行に耐えなければならないともいえますし、複数のルートに差別化を生み出せなければ、無駄にボリュームがあるだけで、ストーリー全体の完成度も下がってしまいます。
結局のところ、ストーリー重視の観点からも、キャラ重視の観点からも、その完成度を高めようと考えたならば、ゼロ年代前半的な構造は欠陥としかいえないのでしょうし、だから廃れていったのでしょう。

本作の場合、確かに、読んでいてテンポ良く進むようにみえます。
ただ、メインのストーリーを読むのに、ここまでルートやヒロインを用意する必要があったのかなと思います。
ゼロ年代前半であれば、水増しでもなんでもいいから、とにかくボリュームを増やせという時代でもありましたから、ボリュームがなければ評価されなかったですし、逆にボリュームさえあれば、それだけで大作とか言われて評価されやすい時代でした。
しかし、今はそうではなく、無駄にボリュームがあるよりも、無駄を削ぎ落して洗練させた方が評価されやすいと思いますし、少なくとも作品の完成度は増すのでしょう。
この作品を描くのに、ここまでの構造と規模は不要だったかなと、なまじ規模を大きくしたがために薄味になってしまったように思います。

<評価>

総合ではギリギリ良作とします。

良くも悪くもゼロ年代前半のストーリー重視ゲー的な作品ですので、そういう作品が好きならば、楽しめる確率は高まるのでしょう。
また、ストーリー重視ゲーの少なくなった現在のエロゲにおいては、こういう雰囲気の作品自体が珍しくなってきていますので、プレイしてみる価値のある作品だと思いますね。

ランク:B-(良作)

駿河屋

Last Updated on 2024-04-21 by katan

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