『花の記憶』は1995年にPC98用として、FOSTERから発売されました。
「ここ楽」と並ぶFOSTERの看板シリーズの1作目になります。
<概要>
「これさえあれば、当分オカズにゃこまらない」と書かれてあるように、本作は、いわゆる抜きゲーになります。
ちなみに、今でこそ抜きゲーという表現が多く用いられていますが、昔はもっとオブラートに包んだ表現で、オカズウェアだのオカズゲー何て言い方がなされていました。
個人的には抜きゲーなんてセンスの欠片も感じられない名称より、オカズウェアって名称の方が好きなのですけどね。
上の文言は、オリジナルのPC98版にはどうだったか忘れたのですが、WIN版のパッケージ裏には書いてありました。
移植版の方が記憶に残っているというのも私にしては珍しいのですが、それにも理由がありまして。
本作は95年の6月にPC98用として発売されています。
オカズウェアとしては『リビドー7』の方が有名だったと思いますし、発売当時は本作が特別有名とまでは思いませんでした。
ところで、95年末には、WIN95が発売されています。
まぁWIN3.1とかMAC対応みたいなハイブリッド仕様の物もありますので、いろいろややこしい時期でもあるのですが、おそらく最初のWIN95完全対応のアダルトゲームが、95年11月末発売の『禁断の血族』だったように思います。
そして本作のWIN95完全対応版が、95年の12月末の発売でした。
WIN95完全対応の最初の作品という称号こそ逃してしまいましたが、1か月という大して差がない程の間近い時期に発売されたのです。
しかも『禁断の血族』のオリジナル版は93年の発売であり、WIN版発売時には既に2年古い作品となっています。
他方で本作は95年製ですから、その年発売されたばかりの新しい作品の移植でありました。
過去の名作でも、古いのはどうも・・・って人もいるでしょうし、単純に過去の作品はもうプレイ済って人も多いでしょう。
数年前の作品ではなく、その年のゲームがWIN用で出るということには、それなりの意義もあったように思います。
そしてWIN95対応ということで、本作のWIN版では、新たに音声が付きました。
抜きゲーはやっぱり音声の効果が大きいだけに、これぞ新時代のアダルトゲームと印象付けたわけですね。
なお、厳密には、ショボイながらもPC98で音声付のゲームもありましたし、TOWNSとかを使っている人には大した驚きでもなかったかもしれません。
もっとも、大半がPC98ユーザーで、大半のゲームに音声がなかったので、一般的にはインパクトの大きい材料ではあったのでしょう。
WIN95が発売されて間もない時期の発売でありつつも、まだまだWIN95に対応したゲームがない時期が続きますので、本作は長い間ショップでも目立つ位置にあったように記憶しています。
PC98版は最初スルーしていたのですが、これだけ目立つ位置にあり続けると、否が応でも目に入ってしまいます。
それでWIN版の方が記憶に残っている作品となったわけですね。
<感想>
オカズウェアないし抜きゲーということで、ほとんどHシーンばかりなので、ストーリーらしいストーリーはありません。
本作は5人の女の子のオムニバスであり、とにかく女の子らのHな体験であるとか妄想が続きます。
この「妄想」というのが、長所でもあり短所でもあるのでしょう。
というのも、内容的には、痴漢、レズ、触手、SMなど、かなり多岐に渡っているのですよ。
妄想シーンならば、何でもありですから。
だから完全にオカズとわりきり、HなシチュやCGさえあれば十分と考えるならば、お得な内容とも言えます。
ただ、シーンが終わって、これは妄想だったとなると、中には萎える人もいるとお思います。
まぁ、ぶっちゃけ私なんですが。
もちろん、すべてが妄想というわけではないので、体験として語られる部分は良かったのですが、妄想部分は当時の私にはどうしても馴染めませんでした。
どちらにしたって作られた物語なのだから細けぇこと気にすんなよと、今だったら多少はわりきれるかもしれませんけどね。
<ゲームデザイン>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
最初に5人のヒロインが画面に表示され、どの女の子の物語を見るかを選択します。
選択した後は読み続けるだけで、ENDまでに登場する選択肢も数個と少ないです。
非常にシンプルな構造と言えるでしょう。
当時はコマンド選択式もまだ多かったですし、選択肢の分岐が複雑で難しいノベルゲーもありました。
どのシステムを採用するかにクリエーターのセンスやこだわりも出てくるのですが、まぁオカズに特化した作品ですので、中途半端なゲーム性を加えて要らぬストレスを与えるよりは、快適にプレイできた方が良いでしょう。
オカズゲーに関しては複雑なことはバッサリ削除してエロに集中させるのも、それはそれで良いとも思います。
注目すべき点はもう一つありまして。
一度クリアすると、これまでに進んだルートが画面上に表示されます。
そしてそのルート上の任意の場所からプレイすることができます。
例えるなら、YU-NOのADMSの簡易版のようなものでしょうか。
もっとも本作の方が先なんですけどね。
もちろん、『YU-NO』のようにシナリオやゲームシステムと融合しているわけではないので、外見上は似ているようでも、実質的な内容は全然異なるものではあります。
今のノベルゲーでも、たまにフローチャートのあるゲームがありますが、むしろそちらを想像してもらえれば間違いないでしょう。
そもそも、本作も最近の作品も、ほとんどが既読分を可視化させるためのフローチャートでしかなく、それらチャートのあるゲームに対し「YU-NOみたいな」と言うことが間違いであって、むしろ「花の記憶みたいな」と言うべきなのでしょう。
いずれにしろ抜きゲーは実用性と利便性が大事ですからね。
いつでも好きな時に好きなシーンが見られるというのは、私は大事なことだと思います。
こういう機能は便利なので早く定着して欲しいのですが、便利な機能に限って中々定着しないものでして。
抜きゲーやセーブ&ロードを多用するような作品には、何より早く標準化して欲しいものです。
総じて抜きゲーに必要な物は取り入れ、不要な物は削ってしまう姿勢が見てとれるわけでして。
ゲームデザイン面からシナリオゲーとの差別化ができており、抜きゲーを理解した作品とも言えるのでしょう。
<グラフィック>
グラフィックは画面全体に表示されるタイプで、その上にテキスト欄が表示されています。
WINDOWS時代には標準的なレイアウトなのですが、PC98時代は枠を設けたり分離したりする作品も多かったので、比較的珍しいタイプとも言えるでしょう。
抜きゲーだけに、画面が大きいことはありがたかったです。
原画は・・・誰だっけか・・・
ここ楽とか最初は横田守さんで、花の記憶の後半はスカイハウスさんですよね。
似たような絵柄だったので、アバウトな私にはあまり区分けがつかなかったり。
どっちにしても、当時としては高水準であり長所と言えるのでしょう。
また、後のスカイハウスさんの絵柄が微妙に見えることからも、この時期のFOSTERの塗りも非常に良かったと言えるでしょうし。
<評価>
オカズウェアは、基本的に新しい方が楽しめますので、今やっても全く良さは分からないでしょうね。
ただ、発売時としては高品質なグラフィックもさることながら、チャート表示の利便性など見るべき点もいろいろあったわけでして。
当時は「ここ楽」派だったのですが、今にしてみればこっちの方が優れていたのかなと。
いつの時代も抜きゲーは不当に低く評価されがちですが、早い時期でのWIN95対応と音声追加の点も含めて、もう少し評価されても良いのかもしれませんね。
そういうわけで個人的には、ギリギリ良作としておきます。
ランク:B-(良作)
Last Updated on 2024-10-31 by katan
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