<小説> バルタザールの遍歴 (佐藤亜紀)

『バルタザールの遍歴』(佐藤亜紀)は、第3回日本ファンタジーノベル大賞の大賞を受賞した作品です。
大好きだった第2回の『楽園』ですら大賞なしの優秀賞止まりだっただけに、大賞を獲った作品って一体どんな内容だろうと気になった作品でした。

感想


バルタザールの遍歴
あらすじとしましては、一つの体を共有する双子、バルタザールとメルヒオールの遍歴を綴った作品になります。
読んだ率直な感想としては、ファンタジーというよりロシア文学っぽいよなってことでした。
いまだにファンタジー=剣と魔法と勘違いする人も多い中で、しかもこれが受賞したのは91年ですからね。
それでこの作品に大賞を獲らせたわけですから、商業ファンタジーに偏っていく国内の状況を何とかしようとした、審査員の気持ちまでもが伝わってきたような作品でしたね。
まぁ思っていたのとは違っていたものの、文章力などは他の新人賞とは比べものにならないくらいに、非常に優れていました。


私個人の好みで言えば第3回までの中では『楽園』が最も好きなのですが、大賞を受賞させるならやっぱりこれくらいの筆力が必要だろうと思えるわけで、それくらいの圧倒的な完成度だったわけですね。
受賞作にハズレが多い賞も多い中、初期の日本ファンタジーノベル大賞は、受賞作にハズレなしと言われていました。
第1回の『後宮小説』や本作の存在が、賞のレベルの高さを作り上げていたってことのなのでしょう。

そういう賞のレベルの維持や、読書家を満足させる観点からは非常に有意義だった本作ですが、商業的にはこれはどうなんだろうとも思ったわけでして。
あまりに一般人の考えるファンタジー像とかけ離れていましたし、第2回受賞作まではアニメ化されていたものの、この第3回からはアニメ化もされなくなりましたしね。
ファンタジーノベル大賞受賞でデビューしたのが、果たして作者にとって良かったのかという問題もありますし。
賞が世間に媚びだしたら終わったようなものかもしれませんが、この賞に限ってはもう少し世間を意識した方が、知名度や人気のアップにはつながったかもしれませんね。

でも、そうしなかったからこそ、高いレベルの維持につながったと思えますし、その辺の匙加減が難しいものです。
優れた作品が必ずしも賞や周りに良い影響を与えるばかりではないという、その難しさに何とも複雑な気持ちになった作品でもありましたね。

Last Updated on 2024-04-13 by katan

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