『夜巡る、ボクらの迷子教室』は2017年にWIN用として、SAMOYED SMILEから発売されました。
同人ゲーの有名ライターが複数参加した作品でありつつ、主題歌でも話題になった作品ですね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
「今残ってるウチの生徒達を卒業させろ」
教師という職に失望し、腐って生きていた主人公「藤原晴生」は、とある病室で、袂を分かっていた父親から依頼を受ける。
その依頼とは、来年で廃校になる夜間学校の教師となり、残っている生徒を卒業させる事。
報酬として告げられたのは、父の莫大な遺産。
晴生の曇った心を動かすには十分な額であった。
夜間学校「藤原学園」―そこは、レールを外れ、ドロップアウトした生徒が集う場所。
そして亡き母親が残した思い出の場所……
教壇に立つ主人公と向き合うのは、たった3名の生徒と、その中の1人の娘である少女。
彼女達は「卒業」というゼロスタートを目指し、彼は手にすることが出来なかったものを求めていく。
どこにいても、みんな同じ時を刻んでいる。
だけど、皆に同じ幸せは舞い降りてこない。
そんなアンフェアな人生に僕らは――
<テキスト>
SAMOYED SMILEというブランド自体は、あまり有名とはいえないと思いますが、私はシナリオゲーが好きですと言っておきながら、この作品に注目していなかった人、或いはこの作品がどういう傾向になるのか想像ができなかった人というのは、正直なところ情弱と言わざるをえないのかもしれません。
本作は複数ライターなのですが、その中にはpororiさんや画用紙さんといった、ストーリー重視の同人ゲーで有名な人がいますからね。
もちろん、個々のライターについては、合う合わないはあるでしょう。
しかし、少なくともその傾向等は事前にわかるはずですし、この人たちが一緒に商業作品を出したならば、一体どういう作品になるのだろうと、期待せずにはいられないはずです。
本作を実際にプレイしてみても、基本的には安心して楽しむことができました。
まぁ、一部ルートで主人公が崩壊していたり、複数ライターの弊害も少しあったので、その点は悪い意味で予想があたってしまい、少し残念ではありましたけどね。
<ストーリー>
本作のストーリーは、夜間学校の教師である主人公が、生徒たちを卒業させようとするものであり、その過程で生徒たちの問題を解決するというものになります。
基本的には鬱ゲーと呼ばれるような、重めのストーリーになります。
この辺は、本作のライター陣をみれば、十分想像できるのかなと思いますね。
上記のとおり、一部ルートで少し崩壊しますが、基本的には主人公は大人として、しっかり頑張っていますので、ガキ臭い学園もの主人公よりも落ち着いてみることができます。
また、学校を舞台にしたエロゲの多くは、学校という舞台を使わずとも成り立つわけでして。
しかし本作では、主人公が授業をするところ、授業における苦闘をしっかり描いています。
それにより夜間学校を舞台にしたという点を、しっかりとプレイヤーに意識させることに成功しています。
夜間学校を舞台にした時点でも珍しいのですが、安易に各ヒロインの悩みに飛びつくのではなく、その設定の土台部分をしっかり描いた点には、とても好感が持てました。
主人公と土台がしっかりしているからこそ、ストーリー自体も終始安定し、こちらも読んでいて楽しむことができたのでしょう。
さて、そのうえで大事になってくるのが、そこから先に伸びていく各ヒロインごとのストーリーですね。
上記のとおり、鬱ゲーと呼ばれるような内容の、各ヒロインの抱えている問題の解消が描かれるわけですが、ここはまぁ、最近のエロゲでは少なくなったかもですが、ライター陣の過去作とかも考慮すると、特段テーマ自体に目新しいものはなかったですかね。
たぶん一番テーマ的にありがちなのは、他の家族から疎外されているという、「はやて」ルートだと思います。
もっとも、並の作品であれば、ヒロインの抱える問題を解消し、それで終わりってなると思いますが、本作では、はやての抱える問題を解消し、はやてとその家族の関係を修復させたのち、そのはやてら家族の力を借りて、今度は主人公の家族の抱える問題を解消することになります。
近年のエロゲは、ヒロインの個別ルートが用意されますが、そこではヒロインの問題を解消するという内容のものが多いです。
これは、極端にいうならば主人公の物語ではなく、ヒロインの物語になってしまっているということになります。
それに対し、はやてルートでは、はやての問題を解消しつつも、最後はグッと舵を主人公に引き戻しています。
つまり、あくまでも主人公の物語として終わらせているのであり、その点には非常に好感が持てました。
かように、ストーリーの構成面等で良いなと思える部分もあるのですが、全体としては、重い題材を扱うわりには、その掘り下げが少し薄い傾向があり、読んでいて、その程度で解決してしまうのかよと、少し疑問に思ってしまうところもありました。
したがって、本作を鬱ゲーとして考え、そのテーマの部分だけを重視すると、少し物足りなく感じてしまうかもしれません。
本作のライター陣には、上記のとおり、ストーリー重視の同人ゲーで有名な方たちが参加しています。
しかし、正直なところ、どのライターも一番尖って輝いていた時期は既に過ぎてしまっていると、私は思っています。
そして、その事前の心配は残念ながら的中してしまっており、本作も十分に楽しめる作品ではあるのだけれど、本当に尖った良いシナリオを堪能したいのであれば、同人時代の代表作をプレイした方が良いと思いました。
<グラフィック・サウンド>
上記のとおり、ストーリー自体は十分に楽しめる作品でありつつも、過去の代表作と比べると、いまいち輝きがないのかなと思います。
でも、ゲームって、それだけではないですからね。
すなわち、商業作品になることで、良くなった部分もあるということですね。
具体的にはまず、主題歌が該当します。
私は正直なところ、あまりピンときてないのですが、本作は発売前から主題歌も話題になっていましたので、ここが魅力と感じる人も、一定数以上いると思います。
次にグラフィックですね。
最近のエロゲで一番の不満点は一枚絵であることが多く、それは欲しいシーンでCGがなかったり、きちんとシーンが描けてないものが多いからです。
その点、本作は、きちんとシーンが描かれていて、そこは非常に好印象でした。
一例だけ挙げておきますが、下のCGはケンカしたあとに仲直りするため、お互いが相手の好きなものを大量に買い込み、ばったり出くわすシーンです。
このあと、何枚かカットインが入ってきます。
テキストやシーンの説明がなくとも、このCGを見ただけでもいろいろ想像することができますし、それだけで楽しめてしまいます。
他にももっと良いシーンもありますので、一枚絵は本作の魅力の一つといえるでしょう。
また、キャラデザは単純に私の好みというのもありますが、目パチや口パクもちゃんとあります。
あと、抜きゲーの中の凄いやつには及びませんが、Hシーンも一応動きます。
<感想>
その他の点としては、システムはあっさりめですね。
私にとって必要なものはありましたので、個人的には全く不満はなかったです。
同人ゲーとか、steam系のADVとか、もっと酷いのも一杯ありますからね。
でも、商業エロゲの充実した作品のと比べると、明らかにシンプルなので、UIとかにこだわる人には物足りないでしょうね。
ゲームシステムとしては、一部でヒロインの内面がのぞけるモードがありましたが、普通にヒロインの回想として描いても良いわけで、あまり有効に機能はしていなかったのかなと思います。
キャラに関しては、はやてが好きですね。
単純に好みです。
それから、ストーリーとも関連することですが、本作のヒロインは、はやて、きな、りこの3人となっています。
りこはね、良い子で可愛いです。
でも、生徒は綾子であり、りこはその子供です。
主人公も大人ですし、普通そこで恋愛感情が芽生えるならば、歳の近い綾子の方でしょうに。
この作品、この設定で綾子ルートがないことは、何とも不自然に思えてしまいます。
エロゲユーザーの大半は炉理好きだろうから、ユーザーのニーズに合わせたのかもしれませんが、ストーリー重視の作品なだけにね、綾子ルートで作るべきだったと思いますね。
<評価>
総合では良作といえるでしょう。
ストーリーに関しては及第点以上ではあるものの、過去の代表作を超えるとまでは言えず、この点をもって名作とはいえないのでしょう。
特に、シナリオしか見ません、テーマしか興味ありませんって人とは、あまり相性が良くない作品とも思います。
しかし、他方で、グラフィックやサウンドや、他のエロゲで薄くなりがちな点も大事に描写したことなど、それらを総合的に考えると、十分な良作だと思いますね。
今回の経験を踏まえて、もう一本作れば、名作も生まれてくるかもしれませんので、もう一本は今回のメンバーで作ってほしいですね。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2024-08-19 by katan




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