プライベートスレイブ

1994

『プライベートスレイブ』は1994年にPC98用として、ラクーンから発売されました。

80年代から活躍する成人漫画家の、海野やよいさんが原画を担当した作品でした。

<概要>

ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。

あらすじとしては、Sである主人公が自身の特殊な性癖を恋人に打ち明けられず、そのまま他の女性とSMの関係に陥っていくというものになります。

<感想>

今と昔の違いというものを考えていた際に、ちょうど良い題材でありつつ、まだ感想を書いていない物として、本作の存在が頭に浮かびまして。
それで今回、扱ってみようと思ったわけです。

ゼロ年代以降ですとエロゲクリエイターは、ライターはラノベやアニメに進出し、原画はイラストレーター方面との縁が濃いように思います。
その点を理由として挙げつつ、ゼロ年代前半は人材が豊富だったみたいな意見を見ることもあります。
しかし、ゼロ年代後半以降のクリエイターは現役で作っているのだから、他所に進出するとしても、それは数年後の話であり、現時点では比較できないでしょう。
他方で90年代までのクリエイターを見てみると、今のようにネットで簡単に調べられないので、それで活躍している人がいないように思う人がいるかもしれないけれど、当時を知っている人ならご存知のように、他所で活躍する人も普通にいました。
また、そもそも、外に出ていくだけのゼロ年代前半と違って、他所からエロゲに挑戦する人も多かったように思います。
だから他所での活躍具合を理由にゼロ年代前半云々を言う見解は、見ていて根拠が弱いなと思うことがほとんどなのです。

ただ、他所で活躍すると言っても、その方向性は異なりうるわけで、上記のようにゼロ年代以降の原画がイラストレーター方面なのに対し、PC98時代の原画は漫画家方面に進む人が多かったように思います。
またその反対に、漫画家がアダルトゲームに参加するケースも、結構あったように思います。
本作は後者の作品であり、即ち80年代から成人漫画家として活躍する、海野やよいさんが原画を担当しているのです。

海野やよいさんは、最近は知らない人も増えているかもしれませんが、90年代にはかなり有名な成人漫画家でして。
私も何作か読んだ記憶はあるのですが、あまり詳しく覚えておらず、必ずしも好きとか自分に合うという漫画家ではないのでしょう。
しかし、名前を聞いて覚えているくらいには各所で目にしましたし、数多くの著作があることからも、おそらく世間的にはファンも多かったのでしょうね。
作品の方向性としては主にSM系が多く、そこに女性作家としての感性が織り込まれており、その傾向が本作にも色濃く反映されています。
したがって、海野やよいさんの漫画が好きな人は本作も楽しめ、そうでない人はあまり楽しめないような、良くも悪くも海野さんの作品といった感じのゲームなのです。

ところで、SMを題材にしたADVは今でも幾つも存在しますが、今だと主人公がMというM向けの作品ばかりのように思います。
プレイヤーの中には、俺はドSだって人も多いと思いますが、今現在はドSには厳しい時代ですよね。
しかし、90年代は逆であり、初のSM調教SLGである『SEEK』にしても、それ以外のSM系作品にしても、Sな主人公の作品ばかりなのです。
その辺りに、時代の違い・変化を感じてしまいますね。
その点、本作は、Sな主人公の物語であり、この時代らしいと言えるのでしょう。

また、今だとSな主人公というと陵辱ものになってしまいそうですが、Sであることと陵辱は別物であり、本作も陵辱系の作品とは異なります。
主人公が最初から彼女持ちという時点で一般的なエロゲと異なっていますし、彼女のことを想いつつも一方で自分がSであるという特殊性癖に悩み、でもその悩みを彼女に打ち明けられずにいるのです。
他方で、ふとしたキッカケで別の女性とアブノーマルな関係に陥るわけでして。
こういう作品に関しては、成人漫画も漏れなく読んでいるような人には珍しくないかもしれませんが、アダルトゲームという範囲ではかなり珍しいタイプなのでしょう。
まぁまだ同じ90年代の作品なら似た感じのはあるでしょうが、最近のゲームで本作に似た雰囲気の作品はないように思います。

少し余談気味になりますが、WIN以降のノベルゲーですと、原画はイラストレーター方面の傾向が強いことから、一枚絵の出来は良いのですが、漫画のような動きを見せることが苦手なように思います。
またシナリオライターが自分を強調するあまり、シナリオ単体で全て完結するような作品が増え、原画や効果音を活かしたトータル的なゲーム作りがされていないケースも、多々見かけるようになりました。
他方で、PC98時代の漫画家方面の色合いの濃い原画ですと、原画がストーリー進行に積極的に絡んでいまして。
結果的にグラフィックとシナリオが融合した作品が増えたり、細やかな演出が増えたりで、作品全体の完成度も高かったのでしょう。
WIN以降の90年代後半からゼロ年代前半頃のノベルゲーの、トータルでの完成度が低く感じられることが多いのは、一体なんでだろうと思っていたんですけどね。
こういうことも理由の一つとして挙げられるのだと思います。

本作は海野さんの色合いが濃く出た作品であり、大手のような技術を要する演出は無理だとしても、シナリオとの融合であるといった部分に関しては、何ら問題ないと言えるでしょう。

ゲームジャンルについては、本作はコマンド選択式のADVなのですが、一本道ではなく、マルチエンド方式になっています。
そのため、総当たりは不可能な構造と言えるのでしょう。
コマンド選択式に対し「総当たり」を理由に馬鹿にする人もいるけど、そういう人がこういう形式の作品をプレイしたならば、馬鹿にする理由が完全に解消されているのですから、当該作品は好まれるのでしょうか?
まぁそもそも、深く考えずに猫も杓子も総当たりなんて言う人は、実際のところコマンド選択式内の細かい種類をほとんど知らず、偏った知識だけで書いているのでしょうし、本作のような作品を知らないから選択式=総当たりと言うのでしょうけどね。

だから何でもかんでも総当たりと言い出す人には、これでもやってろと言いたくもなるのですが、正直なところ個人的には本作のような作品は、かなり苦手なタイプでもありまして。
本作は選択肢による分岐ではないので、普通のコマンド選択式っぽく進行します。
だから一見すると総当たり系っぽくも見えるのに、いつの間にかフラグが立って分岐していまして。
その分岐ポイントが分らないものだから、理由も分らずに結果として積む可能性も高いのです。
コマンド選択式でマルチエンドの作品も、作り方次第では面白くなるのでしょう。
しかし安易に混ぜるのは、ゲームデザイン面でかなり疑問が残ります。
せめて分岐ポイントだけでも、明確な個別選択肢にすべきなのでしょう。

<評価>

ファンなら見かけたら買って損はないのでしょうが、それ以外には普通の作品となるのでしょう。
そのため、総合でも佳作とします。

一般的には優先度の高い作品でもないし、個人的にオススメってわけでもないのだけれど、様々な点で今のエロゲとは異なるように思うわけで、対比してみると面白い存在と言えますし、興味深いよなと思えてくるんですよね。

ランク:C-(佳作)


プライベートスレイブ

Last Updated on 2024-10-09 by katan

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