『和香様の座する世界』は2019年にWIN用として、みなとカーニバルから発売されました。
企画:タカヒロ、シナリオ:田中ロミオということで、注目を浴びた作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・2018年。
古都・葉倉に住む主人公「梅園 遼河」は、現世に現れた古き神に食われそうになる。
しかし日本は飯が美味い。
美味しい食材を提供し、難を逃れた主人公は、そのままその古き神の従僕にされてしまい、世話役になってしまう。
古き神「ワカ」は好奇心満点で、振り回される主人公。
しかし、世界には魑魅魍魎たちが現れ始め、主人公の周囲は騒がしくなっていく。
主人公は怪異による犠牲者を減らすために、「ワカ」こと和香に頼んでその怪異を鎮圧していくことになる。
和香は現代の日本を謳歌し、気に入っていたので、主人公とともに魑魅魍魎退治へと乗り出す。
やがて和香の妹・ルルハも現れ、他の神も現れ、大きな運命が動き出す。
<感想>
上記のとおり本作は、ベースはノベルゲームになります。
もっとも本作の場合、バッドエンド直行の選択肢が多めに作られていたり、神様シールというビックリマンシールのようなものを集め、それが攻略に反映されていたり、画面内をクリックさせるところがあるなど、最近の一般的なエロゲよりも、ゲームであることを意識しています。
神様シール等、そうした要素らが最適解であるかは検討の余地が残りますが、ゲームであることを放棄する方向に進んでいるような今のエロゲ業界の他の作品らと比べれば、十分に好印象といえるでしょう。
まぁ、ゲーム性がそれほど増しているわけではないのですが、広い意味で、これも演出の一貫と言えるでしょうから、そういう意味では演出の優れた作品と言えるでしょう。
他方で、上記のとおり、各要素が最適解かは、意見の分かれるところではあると思います。
特にバッドエンド直行で、個別ヒロインとのエンドがない実質一本道構造は、ひと昔前なら良かったのですが、今のエロゲユーザーには好まれない傾向が強いです。
個人的には、こうした構造も十分ありだと思いますが、タカヒロ&ロミオ作品としてこの構造で出されるあたり、他にもビックリマンシールもどき等の存在も併せると、何だかセンスが古臭く感じてしまうというか、二人とも過去の人なんだなという思いに駆られてしまいます。
うん、ここは理屈も何もないことは自分でも承知しているのですが、直感的にそう感じたということですね。
次にテキストですが、デビュー当初の田中ロミオさんは、シリアスパートを書くのは上手かったものの、ギャグパートを書くのが下手でした。
いやいや上手かったよという人もいるかもしれませんが、パロや下ネタでしのいでいた感じでしたから、それを上手いとはいえないでしょう。
その昔の作品と比べると、本作はギャグパートも普通に面白く、ラノベの執筆等で経験を積んで上手くなったのかなと思ったものです。
キャラも、和香様がとても良く、他のキャラもたっており、良かったと思います。
この辺は、タカヒロ&ロミオの組み合わせのメリットが、最大限に発揮できたところとも言えるでしょう。
問題があるとすれば、ストーリーなのでしょう。
本作は、コメディ調の伝奇になります。
前半は、いわゆるギャグパートであり、これについては上記のとおり楽しかったです。
しかし、後半は駆け足すぎなところがあり、フルプライス作品を作る感覚で書いていたら、途中でミドルプライスの作品であると思い出し、それで無理やり終わらせたような感じになっていました。
本作は日本神話が分かっていないと、或いは、興味がないと、ちょっと分かりにくいので、元々人を選びやすい性質でもあります。
それだけに、いつも以上に丁寧に展開すべきだったのですが、上記のとおり駆け足な展開となってしまい、ちょっと残念な出来でした。
<評価>
総合では佳作としておきます。
ロミオ作品については、プロットの雑さという欠点があり、それが昔から気になっていました。
だから誰かきちんと企画できる人がいて、その内容をもとに書けば、きっと面白くなると、以前から書いています。
その欠点というか不安が、今回は悪い意味で的中してしまいました。
途中までは、これ絶対良作以上確定だろというテンションで進んでいただけに、後半はとても残念でした。
とはいえ、結局のところ、タカヒロ&ロミオという組み合わせにより、キャラや演出等でプラスとなり、ストーリーでマイナスになるというのは、ある意味予想通りなのでしょう。
今後この組み合わせがあるのか知りませんが、おそらく同様の傾向になるのでしょうしね。
いずれにしろ、長所短所のハッキリした作品ですので、合いそうだなと思ったならば、プレイしてみて良いと思いますね。
ランク:C-(佳作)
Last Updated on 2024-08-09 by katan