『エメラルドドラゴン』は1989年にPC88とPC98用として、グローディアから発売されたRPGです。
戦闘・システム重視からストーリー・演出重視へ。
RPGの新たな方向性を見出した歴史的作品でした。
<感想>
RPGは元祖たる『ウィザードリィ (Wizardry)』や、『ウルティマ (Ultima)』が発売されて以降、次々と新たなシステムが作られていきました。
80年代のRPGの歴史とは、システムの進化の歴史でもあったと思います。
他方で現在の国産RPGにおいては、ストーリーやキャラ、或いはグラフィックが重視されています。
これはシステムの進化に限界が見え始めたことで、各ゲームの差別化をゲームシステムではなく、ストーリーやキャラの個性によって図る方向に移行したからです。
優れたゲームシステムを売りにするのではなく、優れたストーリーや個性的なキャラの存在、或いは綺麗なグラフィックによる演出を売りにする。
そうした現在のRPGの主流へと方向性が変わっていった分岐点はどこなのか。
もちろん、これは視点をどう捉えるかでかわってくるでしょう。
ADVでは『ジーザス』があり、ARPGでは『イース』があります。
でも、純粋なRPGという意味では、『エメラルドドラゴン』だったのではないでしょうか。
木村明広さんの描く可愛いキャラたちと、それを存分に活かしたビジュアルシーンの数々は、プレイヤーの心を惹きつけてやまないものでした。
その人気から各機種に移植され、完成度の点ではPCエンジン版あたりが最高でしょう。
しかし、『エメラルドドラゴン』の最大の価値は、完成度ではなく、RPGの新時代の幕開けの象徴であったという、その斬新さにあるのです。
ちなみに、本作の場合、システム的にも普通のRPGとは異なっていたんですよね。
グローディアが先に発売した『サバッシュ』の流れを受け継ぎ、当時としては異常なまでに広大なマップと、AIを使用したタクティカルコンバット風の戦闘システムが非常に特徴的でした。
もっとも、マップが広すぎるのに比べ移動手段が貧相でだるかったり、AIが微妙にお馬鹿だったため、ヒロインのタムリンがいわゆる「タムリンレーザー」ばかり撃って、必要な時に回復をしてくれないなど、一概には優れたとも言えないシステムでした。
ここら辺を許容できるかで、好き嫌いが分かれたでしょうね。
許容できた人には、とても素晴らしい作品でした。
上記のとおり、本作は、可愛いキャラにドラマチックなストーリー、そして当時としては圧倒的なまでに優れたビジュアルシーンという、他には例を見ない明確な長所を備えていたわけですから。
<評価>
私自身は上記の欠点はあまり気にならなかったので、総合としても新時代の幕開けともなった歴史的名作だと思っています。
まぁ、ストーリー・キャラ・演出等は、90年代以降最も発展した箇所ですからね。
今の基準で判断すると、さすがに厳しいものがあるかもしれませんね。
でも、古き良きファンタジーらしい雰囲気に憧れる人には、今でも良さが分かるのではないでしょうか。
いろんな機種に移植されてますが、単純に今やって一番楽しめる(=完成度が高い)のはPCE版だと思うので、興味を持った人にはそれをやるのがベターでしょうかね。
ランク:AA(傑作)


Last Updated on 2025-05-11 by katan
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