月光

1999

『月光』は1999年にWIN用として、URANから発売されました。

とあるゲーム雑誌のシナリオ部門を取った作品であり、それで購入した作品でした。

<購入動機>

今ではすっかりエロゲ雑誌を読まなくなってしまったのですが、一時期はほとんど読んでいた頃もありました。
今でも萌えゲーアワードなどがありますが、雑誌などのランキングや賞なんてのは当てにならないとは思いつつも、たまには役に立つことがあります。
まぁ、雑誌のレビューでこれは面白いと絶賛されていたから買ったら、寝取られ特化ゲーで驚かされるなんてこともたまにありますけどね。

さて、どの雑誌だったかは伏せておきますが、99年のシナリオ大賞として、この『月光』が選ばれていたんですね。
『Kanon』と『加奈』と本作の3つの泣きゲーの中でどれにするか悩んだけれど、結局はこれにしたって。
そう言われると、気になってしまうでしょ。
99年当時に、どれかをやって最高と叫んでいる人は多数いたでしょうが、全部やった人は限られていたでしょうし。
私もその雑誌を読んだ時点では、『Kanon』と『加奈』はプレイ済みでしたが『月光』はまだでした。
だから、その時の私には、どれが一番良いのかなど、判断できるわけもありません。
しかし雑誌のライターは少なくともこれらの泣きゲー3本ともプレイした上で、その比較の上で『Kanon』や『加奈』を押しのけて紙面で本作を推したわけですから。
だから泣きゲーにはまってしまった者としては、プレイせざるをえないのです。

<ストーリー>

それで購入してみたというわけなのですが、ストーリーは恋愛ものというか、上記のように泣きゲーでも良いのですが、三角関係ものでもあるのかなと。

具体的に本作は三部構成になっていて、それぞれ中学・高校・現在となっています。
アダルトゲームとしては、期間が長めですね。
今でも比較的珍しい部類かと思いますが、当時なら尚更です。

第1章では主人公と病弱なメインヒロイン由希子との、初々しい青春時代といった感じの話になっています。
ここはよく出来ていましたね。

もっとも、二人は別々の高校に進んだことから、次第に心が離れていきます。
そこにもう一人のヒロイン・泉実が出てきまして、恋人関係になります。
しかし、今度は主人公が東京の大学へ進学することになり、泉実を残して東京へ向かうことに。

そして泉実への想いを残したまま、久しぶりに同窓会で戻ってみると、そこには大人になり更に美しくなった由希子の姿が・・・
というわけで、由希子と泉実の間で主人公は揺れ動くことになり、更に3部では闘病ものとしての厳しさも加わってきます。
(・・・何か、思い出しながら改めて書いていると、随所で後の有名作らとの類似点が多いですねw
読んでいて、そう思いませんか?
本作が元ネタだとか言い出すつもりもないのですが、独自性を好む私が後続の有名作を楽しみ切れなかった遠因として、本作の存在も外せないのかもしれません。)

もう一度整理しますと、本作が出たのは99年です。
泣きゲーとして捉えた場合には、当時ブームを迎えつつある中という状況になるでしょうか。
鬱ゲーであるとか、三角関係を扱った作品という観点からは、本格的にブームを迎えるのは数年後になります。
したがって、何年か後にこういうジャンルが流行っていくのですが、その先駆けみたいなものですかね。
特に学生だけで終わらずに幾つもの時代を経ることは、今でも珍しがる人もいるだけに、この時期ならより一層目立つとも言えるでしょう。

さて、今になって興味深いなと思うのはユーザーの反応です。
今なら同系統の作品に対し、あっちはテキストや構成が良い、こっちは駄目というような反応が返ってくるのでしょう。
その観点で言うならば、本作のテキストはあまり私に合うとは言えません。

でも、そういう問題じゃないんだよな~
この作品を通して今語りたいことは、ユーザーの「視点」の話なのです。
本作はノベルゲーであり、途中で選択肢は登場するものの、根本的な物語としては一本道になっています。
主人公は2人のヒロインの間で悩むのですが、仮にプレイヤーが選択肢を選んでも、主人公はそれと異なる行動を採る場合があります。
このようなプレイヤーの意思に従うとは言い切れない主人公に対し、プレイヤーはどのように感じるでしょうか。

もちろん個人差はあるものの、大まかな傾向としては、ADVを読み物として捉え育ったゼロ年代以降のユーザーの場合は、あまり違和感を持っていないように感じます。
しかし、主人公はプレイヤーの分身的な発想で育った昔の世代の中には、こういう構造・主人公が認められないって人も多いのです。
つまり本作の登場時に多く言われたのは、テキストやシナリオがどうこうという話ではなく、選択肢によりプレイヤーの意思が反映されないのならば、それはもうゲームではないのだという批判なのです。

選択肢によりプレイヤーの意思がきちんと反映されるか否かという問題は、テキストの良し悪しと関係がありません。
仮にどれだけ面白くテキストが良かったとしても、プレイヤーの意思が反映されないシステムの時点で作品として駄目なのです。
まぁそういう視点で考えるユーザーは、ノベルゲーだらけになることでエロゲから離れてしまいます。
だから世代交代されることで、そのような見解は今は聞くことがなくなりましたけどね。

私の場合はテキスト等もそれほど楽しめませんでしたが、それは個人的な主観的なものにすぎないわけでして。
だから私と異なり、中にはテキスト自体は合って楽しめた人もいるわけです。
自分に合ったテキストとして楽しめた上で、ゲームとしての構造を批判するんですね。
このような経験、すなわちテキストは楽しめたけど構造がひっかかるという経験は、私の場合は数年後に経験するわけで、個々のテキストは楽しめるのに、ゲーム全体としては不満が残ってしまうのです。

二人のヒロインの間で揺れる主人公、そしてその描写はきちんと書けており、非常に上手いと言える作品があったとしましょう。
しかし、二人の間で揺れる葛藤はプレイヤーのものであり、プレイヤーが悩んだ末にこっちと決断した以上は、分身である主人公はそれに従えよと、古いADVゲーマーだとそんな風に考える人も多かったのですよ。
後に読み物としてのノベルゲーが増え、主人公の意思がプレイヤーの意思と一致しないようになり、それでエロゲから離れていったユーザーも多いのです。
たとえば2001年の『君が望む永遠』の場合、褒める人は鬱ゲーとも評される、その描写の重みを評価します。
しかし批判しゲームから離れていった人は、必ずしもテキストが合わないからっていう理由ではなく、プレイヤーを尊重しない構造そのものに不満があるってケースも多いんですよね。
心理描写が上手いとか、そんなものは関係ないのです。

ゲーム構造に対しどういう態度をとるのか、それ自体もプレイヤーの年代によって変わってきます。
各年代の名作を並べる試みはしばしば見かけますが、価値観や基準そのものが異なるのだから、同じ人が同じ基準で全てのゲームをプレイした場合を除き、実はあまり意味がありません。
いや、人によっては上手く活用できるので意味はあるでしょうが、今名作と考えられやすい傾向と同じ発想で考える人には、全く意味がないのだと思います。
プレイヤーの意思を尊重しないけれど非常に優れたテキストの作品があった場合、仮に同じような作品であっても昔になるほど否定されやすく、最近になるほど肯定されやすいということなのでしょう。

また、90年代後半からシナリオ重視の作品が増えたとの表現も見かけますが、正確には「萌えと恋愛を前提にしたシナリオ重視作品が増えた」となるのでしょう。
逆に全く萌え・恋愛を伴わないシナリオ重視作品は、商品としての存在が認められなくなっていきます。
だから私は広い意味でシナリオ重視作品は、むしろ90年代後半から廃れたのだと考えますが、まぁ個人的な好みとしては萌え前提のシナリオ重視って好きなんですよね。
だからまだエロゲを続けているんですし。
でも、萌え前提のシナリオ重視が嫌って人もいるわけで、そういう人は早々にアダルトゲームをやめてしまうのです。
つまり時代は年々萌えが前提として存在しなければ駄目になっていくわけで、その観点から同じ年の泣きゲーとして有名な『Kanon』『加奈』と比べると、本作は一番萌えとは縁遠いのです。
『Kanon』は言うまでもないですし、『加奈』も絵はちょっとあれだけど、設定的には萌えと相性は悪くありません。
その点本作は、一番萌えとかけ離れていて、どうしても人気が出にくかったのでしょう。
逆に一番リアリティはあったんですけどね。
また、闘病ものなんて設定も被りますが、その部分の痛さも一番でしたし。
しかも3本の中で、本作にだけ音声が付いています。
だから闘病ものとしての激しさも、一番重くのしかかってくるのです。
私はテキストはあまり合わない作品ではあったのですが、少なくともこの部分は認めるべきでしょう。
故に、本作を絶賛する人の気持ちも分かるのです。

こういう作品は本来、萌えキャラなんていらないと考える、昔のアダルトゲーマーの方が相性が良いのでしょう。
でも、さっきも書きましたように、ゲーム構造が昔のアダルトゲーマー向きではないのです。
つまりストーリー自体は昔のアダルトゲーマー向きなのだけれど、純粋に読ませる構造は今のアダルトゲーマー向きであり、結果的にストーリー・構造の両方から満足できるユーザー層が、かなり狭くなってしまったのです。
このストーリーでもっとユーザーの意思を反映させるか、或いはこの読ませる構造で萌えキャラを入れるか、どっちかにシフトしていれば、もっと支持者は増えたのでしょうけどね。

<グラフィック・サウンド>

絵自体は萌えとは無縁なものの、ウランの作品だけあって画質は良好。
塗りは本当に強いブランドでしたよね。
ただし、パッケージは詐欺w
幻想的なパッケージになっていますが、全然関係ないですし。

シナリオ重視作品にして、この時点で主人公以外フルボイスも魅力と言えるでしょう。

<評価>

この作品を今プレイし、それでつまらないと言うことは簡単です。
私自身は雑誌購入後のプレイですので、おそらく2000年になるかならないかの時期でしょう。
そして、その時もテキストがあまり合わないことから、それほど楽しめたわけでもありません。
そのため、当時の印象からすれば、佳作相当の作品ではあるのですが、現在はいろいろ考えさせられる点、先駆けとなっている点等を考慮し、総合ではギリギリ良作としておきます。

しかし、数行で終わってしまいそうな感想をなぜ長く書いたのか。
今名作と言われる作品も、昔のユーザーの基準だと酷評されうる、また発売当時は批判され現在はすっかり埋もれた作品の中にも、逆に今ならもっと支持されそうな作品もあったりするのです。
その時々のユーザーの視点は時代によっても変わりうるのだということを、もしこういうことを考えたことがないのであれば、ほんのちょっとでも考える機会になれれば幸いです。

ランク:B-(良作)


月光
廉価版トレカ付
月光 (廉価版) トレカ付

Last Updated on 2025-01-14 by katan

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