きんとうか

2017

『きんとうか』は、2017年にWIN用として、GRISEDGEから発売されました。

設定や世界観に関していえば、同年でも最高峰の作品と言えるのではないでしょうか。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・

きんとうか。それは願いを送る華―
主人公・鈴村颯太は祖母の葬儀のため、十数年ぶりに海を渡り、父の故郷の島に帰っていく。
瀬戸内海に浮かぶ小さなその島は、生きている者と同じように、死者を想い、慈しむ、優しい風習の残る島だった。
祖母を送るための「華おくり」の儀式や、成長した幼馴染のよそよそしい態度に戸惑いながら、
颯太は祖母の通夜の夜、過去に亡くした知人に似た、記憶のない男に出会う。
波のように繰り返される、出会いと別れ。
それは死者の想いが咲かせるという花、きんとうかが見せる奇跡か幻か――。

<テキスト>

本作は、当初の予定から結構、発売が延期されました。
延期が長引くエロゲに良作が少ないこと、BLゲーは個人的に優先度は低いこと、これまでにライターの過去作もプレイしてきましたが、個人的に高評価の作品がないことから、当初は本作の購入を見送る予定でした。

しかし、どうもかなり評判が良いようなので、気になってしましまして。
ただ、本作の場合、共通ルートがほぼ全部、動画で挙がっています。
そうすると、元々のライターのファンや、動画を見ていけると思った人が本作を購入し、動画を見ても、そう思わなかった人は購入しないでしょう。
つまり、高評価しそうな人だけが購入したということで、世間での評判は、一概にはあてにできません。
私も、一応動画を見たのですが、正直なところ、その時には良さが分からず、それで購入をしばらく悩んでいました。
ただ、動画で見るのと自分でプレイするのとでは、全然異なる場合があります。
また、本作のストーリーの方向性からすると、動画を見ているだけでは、おそらく良さが伝わりにくいタイプであろうと予想し、それで購入に踏み切ったわけです。
そして、その予想は見事にあたり、共通ルートにしても、実際にプレイした方が格段に楽しめました。

本作のライターは、日常の何気ない会話部分においても、詩的な表現を用いる傾向があり、それが他のライターにはない魅力にもなっております。
だからファンが生まれるのも、十分に分かります。
他方で、過去作の場合、ライターがノベルゲーのテキストに慣れていなかったのか、少し独自な書き方をする傾向がありまして。
それで違和感も大きかったのです。
例えば『図書室のネヴァジスタ』では、そもそもゲームであることとマッチせず、それで私は低評価にしていました。
その傾向は『Si-Nis-Kanto』でも少し残っていたのですが、本作ではなくなっており、過去作にあった問題点はなくなりました。

また、私は、過去作の題材では、ライターの持ち味が、いまいち発揮できていないと思っていました。
しかし、夏の瀬戸内海に浮かぶ田舎の島を舞台とし、日本古来の葬祭や島の風習を描く本作においては、詩的で豊かな描写が、夏の瀬戸内の島の爽やかさに上手く絡みあい、ライターの持ち味が存分に発揮されたように思いました。

つまり私にとっては、これまでウィークポイントでもあったテキストが、本作に至り、完全なストロングポイントになったのです。

<プロット・ストーリー>

上記のとおり、本作は、夏の瀬戸内海の田舎の島を舞台とし、日本古来の葬祭や島の風習を描いた作品になります。
具体的には、祖母の葬儀のために島に戻った主人公は、そこで島に伝わる葬儀の方法等を学ぶうちに、次第に不思議な体験をするという流れになります。

本作のライターの過去作は、どれもストーリー自体は良いものの、プロット等でそもそも疑問の残る作品もありまして。
例えば『Si-Nis-Kanto』も、ストーリーは良いのです。
しかし『Si-Nis-Kanto』では、BLゲーにおいてマフィアものの良作が散々発売されている中で、あえてマフィアものだったことから、またかよという思いもありましたし、ストーリーの良さも既視感を上回るほどではありませんでした。
オリジナリティというか独自性が弱いのが、これまでの欠点であったと思います。
そういう意味では本作は、題材的にも珍しいですし、良く調べた上に、きちんとそれを説明しているものだから、読んでいて新鮮な気持ちで楽しめるのです。
今までにはなかった独自性が生まれたなかで、本来のストーリーの上手さは維持しているわけですから、面白くて当然なのです。

本作に対し、泣いたという感想も見かけます。
私自身は特に泣きゲーというほどでもないと思っていますが、それでも、しっかり調べ練られた設定の上に展開されるストーリーは、最後でジーンとくるものがありました。
単純に泣きゲーの一言で表現できないような重みがあったと思いますし、夏になったら瀬戸内の島に行きたいなと思いたくなるような、とても良い作品だったと思います。

ただ、一つ気になる点があるとすれば、あまりBLでやる必要性を感じなかったことですかね。
本作では女性も普通に出てきますし、男女の愛憎も描かれております。
本作の設定上、攻略対象となるキャラに関しては、男性にする必要があったといえるでしょう。
しかし、主人公は女性でも良かったわけで、むしろBLではなく乙女ゲーにした方が自然というか、全体的にしっくりきたと思うのです。
本作が傑作とまでは思えなかった理由として、個人的にはこの部分は大きかったです。
まぁ、同じBLゲーの『Si-Nis-Kanto』では、主人公が完全に姫扱いで、凄く違和感がありましたからね。
それと比べると、本作は大分マシではありますけれど。

<感想>

その他の感想として、サウンドや、一枚絵の中の、Hシーン以外のイベントCGは良かったです。

ただ、HシーンでのCGは、ハッキリダメだと思います。
まぁ、私は男性同士のHシーンには興味がないので、影響はないのですけどね。
年齢制限ありのBLゲーとして、エロにも興味があったという人だと、どうしてもガッカリしてしまうだろうなと思いながら、本作をプレイしていました。

<評価>

総合では、十分に名作といえるでしょう。

上記のように、若干気になる部分はあることから、傑作とまでは言えないと思います。
それでも、プロット・ストーリーに関しては、年間最高レベルの作品だと断言できます。
最近は、コンパクトな同人ゲーの中には、まだ読み応えのある作品があるのですが、フルプライスのボリュームのある作品だと、ガッツリと読み応えのある作品は少なくなりましたからね。
続編等なしの単発のオリジナルで、フルプライスのボリュームを伴った作品で、プロットやストーリーだけで名作と言い切れる作品となると、本当に数年ぶりって感じでもあり、それくらい読み応えのある作品でした。

ランク:A(名作)

 


Last Updated on 2024-08-19 by katan

コメント

  1. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    評判が良かったので購入しましたが、テキスト良し、プロット良し、ストーリー良しとシナリオライターの実力が存分に発揮された作品でした。グラフィックも綺麗で満足でしたが、Hシーンは苦手でした…。
    確かにBLゲーでなく乙女ゲーでも成立できた作品ではあったかと思いますね。何はともあれ、雰囲気が良く、最初から最後まで面白い作品でした。

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    これまでは、原石みたいな感じで、
    良い部分はありつつも、足りない部分も多いライターだったんですけどね。
    この作品で一気に化けましたね~
    あとは、下手に成人向けBLとかにこだわるのではなく、
    いっそのこと一般向けとかで出したら、もう一皮むけるのではないかと。
    とりあえず、次回作があるのならば、ぜひプレイしたいものです。

タイトルとURLをコピーしました