『sense off ~a sacred story in the wind~』は、2000年にWIN用としてotherwiseから発売されました。
グラフィック・サウンド・キャラ・シナリオの全てが優れたノベルでしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・季節は、春と初夏の端境期。
海からやって来た東風が、藤の花を揺らす頃。
桜の時期は終わったものの、初夏というにはまだ早い、そんな季節。舞台は、地方都市。
「緑に囲まれた豊かな住環境」――そんなキャッチフレーズのもと、分譲住宅が売り出されているような、そんな街。
本当は、そのキャッチフレーズは、単に「田舎」ということを隠蔽するためのものに過ぎなかったりもする。
その都市には、1つの施設がある。
大学に附属する研究機関だが、そこでは、学園生活が営まれている。
どこにでもあるような、それでいてどこかが違う、擬似的な学園生活。
そんな舞台設定に訪れる、聖なる物語――発端は、シンプルな事故だった。
主人公・杜浦直弥は、自転車で転ぶという、間の抜けた事故に遭った。
しかし、通りがかりのおばちゃんに救急車を呼ばれたところから、事態は妙な方向に動き始める。
救急車で病院に運ばれてなぜか入院する羽目になり、さらにその病院から、首都圏の外れの街にある施設に移されることになる。
そこで直弥を待っていたのは、幼馴染みとの再会という、人生の中でも割合ドラマティックな方に分類されるだろうイベントだった。
施設で少女たちと擬似的な学園生活を送るうち、直弥はやがて、自分自身と彼女たちをつなぐ絆に気づくことになる……。
<総論>
アドベンチャーとは名ばかりでノベルゲームばかりが溢れかえっている、そんなノベル全盛時代になって久しいですね。
まぁ、ノベル好きには良い時代なのでしょうけれど。
ゲームを構成する要素はいくつもありますが、現在のノベルに関してはゲームシステムという部分ではどれも大差はなく、他の部分で他との違いを表現することがほとんどです。
すなわち、ストーリー・キャラ・グラフィック・サウンド等ですね。
これら全部が高水準というのであれば文句なしなのですが、現実には、そううまくはいかないわけでして。
大抵の場合は、この中のどれかが優れていれば、それで名作たりうるわけです。
しかしながら極少数ではあるけれども、全部が優れてる作品もあるわけでして。
私にとって、その数少ない内の一つが、この『sense off』なのです。
ちなみに、『sense off』には高評価がある一方で、ライターの元長さんが挑発的な言動を取って当時話題にもなりましたっけ。
それに関しては私はあまり興味ないのですが、1点だけ。
遊んだ人間の一部が物語を理解できないのなら、それは遊んだ人間の読解力不足なんでしょう。
でも、ほとんどの人間が理解できてないとライターが言うのなら、それはただ単にライターの実力不足なだけです。
人にわかりやすい文章を書くというのも、実力の一つですから。
元長さんさんの作品は好きなのも多いのですが、普段の主張とかゲームに関する批評のスタンスには疑問も多いです。
むしろ私はかなり否定的です。
まぁ個人の人格と作品の内容は別なので、その辺は完全に切り離して考えていますけどね。
<感想>
面倒くさいことはさておき、本作は簡単に言えば『ONE』路線なんですよね。
具体的には、序盤:ギャグ→終盤:泣きという流れの作品になります。
それに加え、本作のストーリーは、理系チックなんですよ。
SFとかが好きな私にはモロにツボでした。
個人的には、ベルトホルトの話なんかは特にね。
いわゆるインテリ系とかって言われる類の作品なのでしょうが、インテリ系って言われる作品でも理系の作品は今でも珍しいので、その点はポイントは高いですね。
したがって、大雑把に言えば理系の『ONE』であり、『ONE』のように「序盤:ギャグ→終盤:泣き」路線が好きで、でも心理描写だけに力を注ぐのには少々飽きたかなって人、後発の作品には何かしら独自の要素が欲しいと考える人には、本作はもってこいなのではないでしょうか。
なお、本作については、個人的には文章も読みやすく、日常シーンも楽しかったし、ストーリーも良かったと思うのですが、どうも日常が合わないとか、ストーリーが難解と感じる人もいるようでして。
その感覚が自分にはよくわからないのだけれど、理系の作品ということで、理系アレルギーみたいな人には合わない可能性があるのかもしれません。
それに加えて、珠季、成瀬、椎子ちゃん・・・
本作では、好きなキャラも多かったですね。
このゲーム、同い年のヒロインに対しては主人公が守るんですよ。
でも、年下のヒロインのシナリオでは逆に主人公が守ってもらってます。
そのあたりも個人的にはツボでしたし、当時としては構成的に珍しかったのかなと。
<グラフィック・サウンド>
次に、『sense off』の原画はゆうろさんです。
一見すると地味なんですよね。
そのため、パッケージとかを少し見ただけでは、本作に対し、あまり魅力を感じられないかもしれません。
私もそうでしたし。
しかし、実際にやってみると、他とは全然違うってことが分かるはずです。
一枚絵のCGの完成度が別次元なんですよ。
ただ可愛いキャラを前面に押し出すというのではなくて、画面全体を使った一枚の絵の構図として非常に良く出来ていました。
これには正直、とても感心させられましたね。
CGだけでも十分に元が取れますよ。
ゆうろさんは、最近はゲームのキャラデザよりも、もっぱら背景をやることが多いですが、個人的には、もっとゆうろさんの原画でゲームをやりたかったですね。
流行の萌え路線ではないので、人気は出にくいかもだけど、実力は超一級品でしょう。
少し話がずれますが、2008年のminoriの『ef』のOP。
あのOPには凄く感動したものですが、あのOPの背景もゆうろさんなんですよね。
近年の背景が凄いって言われているゲームの多くに、ゆうろさんが絡んでいる気がします。
近年はキャラデザも皆似てきていて、キャラクターだけでは他社との差別化が図りにくいですよね。
そうなってくると、背景の良し悪しが大きなポイントにもなってくる気もします。
そう考えると、ゆうろさんのようなしっかりと背景までも描ける人は、これから需要が増えてくるのではないかと思いますね。
まぁ、最初に感想を書いた時点では背景が鍵と思ったのだけれど、ワイド化が標準になった最近のアダルトゲームに関しては、それ以前の問題に逆戻りしているような。
キャラのドアップばかりで、何を描こうとしているのか、全く伝わってこない作品が増えていますからね。
最近のノベルゲーをやればやるほど、本作の良さが分かる感じですよ。
サウンドは、この頃絶頂期だったI’veです。
また主題歌は、keyの折戸さんが担当しています。
これはこの頃の最強の組み合わせですよね~本当に名曲ばかりでした。
<評価>
本当に長所の多い作品でしたね。
ここまで揃った作品も滅多にないです。
総合でも文句なしに名作といえるでしょう。
個人的には、その後のノベルゲーに対する基準として長く位置付けられていた作品でもありましたし、主観的にも非常に好きな作品でした。
ランク:AA(傑作)
Last Updated on 2025-01-22 by katan
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