Phantom ~Phantom of inferno~

2000

『Phantom ~Phantom of inferno~』は2000年にWIN用として、ニトロプラスから発売されました。

ニトロプラスで心底楽しめたのは、結局このゲームだけだったように思いますね。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・
暗黒街で相次いで発生したマフィア幹部暗殺事件。
その影で囁かれる謎の組織『インフェルノ』と、組織最強の暗殺者である『ファントム』の噂…。
一人旅でアメリカを訪れた少年は、ある事件で偶然にもファントムに遭遇。
その正体は自分と歳が変わらない少女だった!?
それまでの記憶を消され、ファントムのもとで数々の暗殺術を学ぶうちに、いつしか少年は組織最高の暗殺者までに成長していく。
陰謀が渦巻く、凶暴で無法な世界に芽生える純愛の行方は何処へ…。

<感想>

これは正直、とても感想が書きにくいと思ったわけでして。
最大の長所は間違いなくストーリーなのだけれど、そこから先、筆が進まないのです。

確かにラストの草原のシーンは、とても胸にジ~ンときました。
あのシーンは、10年以上経っても、いまだに忘れられません。

※それだけに、アニメ版のあのEDは余計にもガッカリしたわけですが。。。
ただ、単純に泣きゲーとして紹介して良いかというと、そういうわけにもいかないでしょう。

基本的には格好良くて強い主人公と、迫力のあるアクションシーンが特徴的であります。
今ならこういうアダルトゲームもラノベも多いでしょうが、この当時はこういった類の作品はまずなかったので、それだけでも珍しく新鮮に感じられましたね。
たぶん、この新鮮という感覚が、リアルでプレイした人の率直な感想なのではないでしょうか。
加えて、珍しい題材である上にテキストも楽しめるのですから、面白いと感じるのも当然なのかもしれません。

でも私個人はそれで良いのですが、他人に対して面白いからやってみれってだけでは、ちょいと不親切すぎるかなと。
簡単に紹介されているところでは、ハードボイルドな作品って感じで紹介されていますよね。
表面的に見ると、確かにストーリー上のジャンルはハードボイルドなんでしょう。

ただ、私はプレイ当時、その表現に違和感があったのです。
なぜかというと、私はハードボイルド作品が嫌いなんですね。
名作と言われるハードボイルド小説は何冊か読みましたが、サッパリ魅力が分からない。
いや、ハードボイルドの魅力を説明したものも読みましたし、その理念みたいなものも分かります。
だからそこに魅力を感じたり格好良いと感じられる人がいるのも、十分に分かるのです。
ただ、私はそのハードボイルド的な思想に共感が持てないだけなのです。
これはもう、理屈は抜きに肌に合わないのでしょう。
誰しも合うジャンルと合わないジャンルは当然あるはずで、これはもうどうしようもないのですよ。
少数かもしれませんが、他にもハードボイルドって聞いて、それで本作のプレイを躊躇した人もいるかと思います。

でも、私はファントムがとても楽しかったんです。
何でなんだろうって、少し考えましたね。

この答えは、予想外のところからもたらされました。
つまり、ライター(・・・だったと思う)が、インタビューで答えてたんです。
雑誌は何だったか忘れましたが、その中でファントムは「ジュブナイル」であるって言ってました。
そうだ、それだよって思いましたね。
この作品はジュブナイルなんですよ。
だから私が楽しめたのです。

この作品を安易にハードボイルド作品としてすすめるのは、私には間違ってると思います。
銃が出てればハードボイルド、未来が舞台ならSFなんて括りは間違いであって、このゲームの魅力は、本質的にはハードボイルドではないと思います。

ハードボイルド風のジュブナイルというのが、この作品を表す最適な表現なんでしょう。
アダルトゲームを代表するハードボイルド風ジュブナイルの名作、ファントムとはそういう作品なのではないでしょうか。

ということでいろいろと書いてきましたが、内容的には迫力のある戦闘シーンにラストの感動的な展開も含んだ、とても秀逸なジュブナイル作品と言えるでしょう。

もっとも、だからこそ逆に、生粋のハードボイルド好きには、もしかしたら本作は楽しめないんじゃないかなとも思うわけでして。
私はこのゲームは多くの人にやってもらいたいと思いますが、ハードボイルド好きにだけは逆にオススメしません。
アダルトゲーム好きの中に、コアなハードボイルド好きがどれだけいるか分かりませんが、そういう人はそっち方面をあまり期待しない方が良いでしょうね。

・・・ここまでが、当初の印象だったのだけれど、もう少し補足しておきます。
ライターはその後にグロ系の作品とかも出しているけれど、本当にグロを好む人には支持されていないように思います。
いろんなジャンルの作品を扱っているのだけれど、どのジャンルも上っ面だけの作品ですので、あまり詳しくないような初心者はすぐに騙されてしまい楽しめるけれど、その道に詳しい人には通用しないのでしょう。
私はファントムは非常に面白いと感じましたが、上記のようにハードボイルドに関しては素人でしかありません。
だからこそ楽しめたとも言えるのかもしれないと、今になって思うのです。

まぁ感動的なストーリーに上手いテキスト、それにゲームにマッチしたサウンド。
これだけで十分名作に値するでしょう。
しかし、それだけでは傑作には値しません。
いや、そもそもアダルトゲームとして新鮮というだけでは、あるいは単に他所から持ってきたというのでは私は高く評価しません。
場合によっては、名作ですらなくなります。

じゃあファントムは普通のノベルと何が違うのか。
それは、ライターの後の作品との比較にも当てはまるのですが、このゲームがプレイヤーの選択したあとを、きちんと描いていたことにあります。
選択肢により主人公の運命は変化していきますが、それぞれをきちんと描いていたんですね。
だからそこに、単なる小説とは異なるプラスアルファを見出すことができ、本作を名作と判断した最大の要因も実はそこにあります。

その後の虚淵さんの作品は、やっぱりどこかから拝借したような設定だったり、オマージュが多かったりで、それはそれで問題も多いです。
でも、ゲームとしてプラスアルファをしてくれれば、そのプラスアルファの部分に対して評価することはできると思うのです。
しかしどれもボリュームがなくなり、ゲーム性がなくなりと、どんどんプラスアルファの部分がなくなっています。
そうなると、そこにライターの独自性は存在しなくなります。
作品としてのプラスアルファの欠如、それが後の作品の最大の欠点なのであり、本作との違いでもあるのでしょう。
だから私は本作は評価するものの、以後の作品には辛くなってしまうのです。

と言うわけで本作に限っては、ストーリー・シナリオは高く評価できるといえるでしょう。
では、それなら本作は完璧な作品かというと、必ずしもそうでないわけでして。
まずはシステムですが、いろいろリメイク版が出てるので最近のは知りませんが、最初のオリジナル版は重かったですね。
マクロメディアのDirectorで作られてたんでしたっけ。
どうにも、これは良くなかったです。
普段でもロード時間が長くても気にしないって人なら、本作でも問題ないのでしょうけどね。
他のCSゲーとかでロード云々に文句を言っているような人だと、本作の操作性の悪さは確実にマイナスとなるでしょう。
まぁ、操作性がグダグダな分、反対にメニュー周りのデザインは凝っていましたので、結果的には相殺かなとも思いますけどね。

次にグラフィックですが、キャラデザは正直イマイチでしたね。
ゲーム版のキャルなんて、全く眼中になかったですもん。
それだけにアニメ版のキャルの可愛さには、心底驚かされたものです。
というか、ぉいぉい、この絵でリメイクしろよ~って、ずっとそう思いながらアニメ版を見ていましたよ。
アニメ版はラストを筆頭に中身は全く駄目駄目でしたが、キャラだけはGJでしたから。
どうやら今度出るXBOX360版はキャラデザがアニメ版に準拠するようなので、その点では望みが適いそうな感じですね。

<評価>

結局、ストーリーとテキストは非常に高く評価できるのですが、それ以外の要素は平均かそれ以下だったりするんですよね。

ノベルゲーは絵と音が融合することで、小説にはない魅力が生まれると、ノベルゲーを好きな人は言います。
私もそうだと思うのですが、それだけにね、キャラデザがイマイチで融合させるシステムが駄目な本作は、果たして一体どれだけ小説と異なる魅力を作り出せられたのかと。
その辺が、名作であると思いつつも、傑作には至らなかった理由になります。

ランク:A(名作)

   

Last Updated on 2025-01-20 by katan

コメント

タイトルとURLをコピーしました